NINTENDO SWITCH「ゼルダの伝説 BREATH OF THE WILD」インプレッション

これはゼルダという名のアクティビティ。ゲームとは“遊び”でありながら、往々にして製作者の指示に従わされ、意図通りに行動させられ、課せられたノルマを消化させられる義務感の伴う“労働”でした。オープンワールドで自由度の増したゼルダの伝説BREATH OF THE WILDは、そういった制限された自由度を取り払い、「ゲームとは仕事ではなく遊びなんだ」という根本的なゲームの概念を指し示してくれた価値ある1本だと思います。

最初に4つの神殿を攻略して、アイテムを揃えて冒険の準備を整えたら、いよいよ本格的な冒険の始まり。まずは道しるべとなる「シーカーストーン」を完全なものにするため、ハテノ村に行って研究所所長を尋ねるのが目的です。地図で場所を確認してみると、めちゃくちゃ遠方にある! ここでゼルダの世界の広大さに驚くのですが、とりあえず地図通りまっすぐ東に向かえば辿り着けるはずですから、そんなに難しいことでもなさそう。「さっさとそのハテノ村とやらに行って用事を済ませるか」と、軽い気持ちで私は出発しました。

ところが、全然目的地に向かえない!(笑) 夢中になってプレイしているうちに私が辿り着いたのは「ミナッカレ馬宿」という場所。地図で見てみるとハテノ村の遥か北側! 自分としては全然そんなつもりはなかったのに、いつの間にか北へ北へと行き先が逸れていて、まったく関係のない場所にやってきたのでした。

別に私が極度の方向音痴なわけではなく、それだけ道中に興味を惹かれる対象が多かったせい。「この川の流れに沿っていくとどこに辿り着くんだろう?」「あの山の上からの見晴らしはどんなだろう?」「あっちの方が近道じゃないのか?」「あ、あんなところに祠があるぞ!」「敵の住処だ。今の強さじゃ無理かもしれないけど挑戦してみたい!」等々、当初の目的から逸れて、ついつい寄り道してみたくなる衝動に駆られてしまうんですよ~。

私としては本来の目的を忘れたつもりは毛頭ないんですけど、寄り道した先にまた面白そうな何かを発見し、「遠回りになるけど、とりあえずあれが気になって仕方ないから、先にこっちから行ってみるか!」と、あっちへふらふらこっちにふらふら。気が付いたら、当初の目的地とはまったく違う場所にいたという。テスト勉強をしている最中、他のいろんなことが気になりだして、ついついテスト勉強以外のことに夢中になってしまう感覚に似ています(笑)

他のオープンワールドRPGでも、“サブクエスト”として本来の目的ではない別の目的が用意されているのは普通です。でも、結局それは他人に強制されてやらされるもので、多くの場合“お金やアイテムがもらえる”という報酬目当て。報酬がもらえるのは、一見すると嬉しいことのように思えますが、お金やアイテムを手に入れるために面倒なことをクリアしていくのって、これはもう仕事なんです。次第に「サブクエストこなさなきゃ…」という義務感に変わり、億劫に感じるんですよねぇ。

一方、ゼルダは遊び。ゼルダにもそういったサブクエストに相当するイベントがないわけじゃないですけど、行動原理は総て内から湧き出る純粋な好奇心なんです。お金やアイテムがほしくてやらされているんじゃない。自分が気になる場所に行ってみたい! 行かなくていいところへ敢えて行ってみたい! 「○○に行きなさい!」という大人に逆らって、勝手に違う場所に行ってみたい! 誰にも縛られず、自分の思うがままに好き放題遊び回りたくなる子供の感情そのもの。これぞ童心に戻れるゲームだと言えますね!

私がプレイした直近のオープンワールドのゲームはFF15でしたけど、あれはゼルダと対極にあるとても自由度の低いゲームでした。やっていたのは冒険ではなく、単なるクエストのお遣い。FF15もマップの広大さは相当なものでしたが、目的地までの移動距離は、無駄に時間を費やすだけのマイナス要素でしかありませんでした。最初から移動手段は車で、車道を自動で移動するのを眺めているだけ。決められたルートをただ走り、決められたノルマをこなす。言わば、ツアー旅行の団体客にすぎませんでした。「はい、次は清水寺」「次は金閣寺」「次は伏見稲荷大社」「次は嵐山」と、ツアーコンダクターの指示通りに、観光名所をバスでぐるぐる回らされていたようなもの。

JRPGはお遣いゲーの歴史でもありますから、人から「○○やれ」と指示されることに日本人は慣れきっている部分もありますし、そうやって分単位の綿密な観光ルートが決められている方が楽だと感じる方もいるでしょう。だから、一概にゼルダが良くてFF15がダメだと論じているのではありません。ただ、オープンワールドという自由を謳った世界で、これだけ「自分の気が向くままに冒険できる」ことは、私にとって途轍もない心地好さなんです。

敵とのバトルにおいても、いろいろ自分なりに工夫することができますからね~。ボコブリンという敵は、雑魚敵でありながら知性があり、思わぬ賢い行動をしてくるだけに、こっちも力押しじゃなくて考えさせられる。この前、奴らに向かって爆弾を投げて一網打尽にしてやろうと思ったら、爆弾に気付いた1匹のボコブリンが爆弾を蹴り飛ばして難を逃れたのは、敵ながら天晴れだと感心させられましたよ。

彼らは人間と同じように住処の中で生活をしており、夜は見張りを立てて就寝していたりします。そこにリンクが夜討ちを掛けると、敵襲に目が醒めたボコブリンたちは、慌てて自分の武器を取りに行って応戦しようとするのがカワイイ(笑) そんな三国志的な夜襲もできちゃうのがゼルダなのです。

三国志的というともう1つ、あるボコブリンの集落を攻め入ったときにこんなことがありました。その集落は山間部の狭い谷間にあり、強い風がビュービュー吹き荒ぶ場所で、地面には生い茂った草むらで覆われていました。そこで風上に立つリンクが草むらに火を掛けると、風で煽られた炎はたちまち当たり一面広がり火の海。敵は炎の壁に遮られリンクに近付けず、やがて逃げ場を失って皆焼き殺されたのでした(笑)

そう! 三国志を愛する皆さんならお馴染みの赤壁の戦いですよ! 諸葛孔明の如く、風向きを味方につけて、遠大な火計で相手本陣を根こそぎ焼き払う!! この快感ときたら!! 別に「敵の陣を焼き払え」という指示が出ていたわけじゃありません。地形と天候を見て、「この状況だと、火をつけたら一網打尽じゃないか?」という閃きが、本当に実現可能だったりするのです。きっとゼルダにはまだまだ自分が気付いてないだけで、このような“別の攻略法”が無数に隠されているんじゃないかと思います。

昨今のゲームはどれもユーザーフレンドリーなものばかりで、プレイヤーにストレスを1ミリでも感じさせないよう、死ぬほど親切丁寧に作られています。今なにをすべきか1から10まで教えてくれて、そのための攻略法もゲーム側が提示してくれる。それでも難しいと不満が出たら、「わかった! じゃあ、ボタンを押すだけでいいから! 見ているだけでもいいから!」とゲーム性さえ放棄する始末。ユーザーが幼児のように見くびられた結果、ゲームとしての楽しさ、そして、冒険心が奪われてしまいました

ゼルダはそんな度を超した過保護は捨て、“ちゃんとユーザーは自分の頭で考えて行動できる”と信じて、声を掛けずに側で見守ってくれています。ゲームの楽しみ方を1から10まで説明しなくても、自分で勝手に楽しさを見つけられると。その上で、ユーザーを突き放した不親切さではなく、最低限の基本的な楽しみ方はちゃんと教えてくれる……そのバランス感覚が素晴らしいのだと思います。古参ゲーマー向けと、新参カジュアルゲーマー向けの二極化が激しくなっている今、意外とこの中間を考えてくれているゲームって少ないんですよね~。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

定価:¥ 7,538

Amazon価格:¥ 6,508

カテゴリ:Video Game

発売日:2017-03-03


ABOUT

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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  1. マップの上り下りがすごく楽しめますね
    どうせ登れないんだろうな、と思った所がどこもよじ登れて面白いです

    • ほんとそれですね。見渡す風景のどこにでも行けるような気分。GTAみたいで面白いです。

      高い山の頂上まで登って、そこから地上を見渡し、パラグライダーで滑空するのが最高に気持ちいい~。

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