ポッピンQ 映画評

「ねぇねぇ、聞いてや! 今朝めっちゃ面白い夢見てん!」と聞かされる他人のクソつまんない夢の話の如き地獄の95分。よくもまぁ、こんな中身すっからかんの与太話のような作品を、大金投じて超豪華な映画に仕上げようとしましたね。

異世界転移、アイドルライブ、能力バトルと、とにかくオタクが喜びそうな売れ線てんこ盛りで、その節操のなさにきな臭さを感じてはいましたが、本当に売れ線をぶっ込んでジューサーで掻き回しただけの程度の低い内容でした。ストーリーは総てが唐突、総てが場当たり的、総てに脈絡がない。開始10分で頭痛がしてきました。

まず導入としては、卒業を間際にした5人の女子中学生がいきなり異世界に飛ばされます。そこで同位体と呼ばれる存在と出逢い、世界が崩壊の危機に晒されていることを知らされます。世界を救うには、時のカケラを集めて5人でダンスをすることだと教えられます。どうしてこの5人が選ばれたのか、どうしてダンスなのか、同位体とはどういう存在なのか、深い意味はありません。

「世界崩壊の危機をダンスで救え!」というバカアニメっぽいノリは嫌いじゃないんですけど、これをギャグではなくあくまでシリアスでやっているからノリ切れないんですよ。シリアスでやるなら、最低限の辻褄合わせは必要なのに、それがない。子供騙しにもほどがあります。

ポッピンQの脚本の作り方はものすごく単純で、総てが「XだからYしよう」の連続。本当にこの方程式1本でシナリオを作っています。「どうしてXだからYなのか?」という疑問は全部スルー。「とにかくXだからYなんだ」で押し通してきます。こんな無茶苦茶が通るなら、誰だって脚本を作れるんじゃないですかね? XとYの因果関係は一切気にしなくていいんですから。

X=「100m走でライバルに負けた伊純のトラウマを払拭させたい」 Y=「100mの桟橋が崩れる前に11秒88で駆け抜けさせる」 確かにYをクリアすればXは解決します。でも、「都合良くジャスト100mの崩落寸前の桟橋が目の前に現れて、ジャストパーソナルベストの11秒88で駆け抜ける条件が与えられたのはなんでなの?」という疑問を持つことは許されません。

結果的に伊純は、この100mの桟橋を11秒88で駆け抜けたわけですが、このときの彼女は明らかに走るには適していない服装で、明らかに走るには適していないヒールの高い靴を履いていました。これまで頑張っても頑張っても出せなかった11秒88が、こんな雑なやり方であっさり記録出ちゃったところがお笑いですね。

私はこの映画を象徴する存在って、レミィだと思っています。レミィというのは、異世界に住まう可愛らしいマスコットキャラ(ポッピン族)の1人(1匹?)。彼女はとある事情から喋ることができなくなってしまったそうです。でも、最終的には喋られるようになりました。……それだけです。彼女が喋られなくなったこと、喋られるようになったこと、どちらにも深い意味はありません。今まで喋られなかった彼女がようやく発した言葉にも意味はありません。意味ありげな設定を持ちながら、まったくもって物語に意味のない存在だったのです。

ポッピンQは万事がこれ。いろんな設定が雑然と散らかっていますが、その1つ1つに意味がありません。「それいる?」という要素が無数にあって、でも「それいる?」という要素を全部カットしたら、ポッピンQには何も残らないという。理屈で考えようとする人間は絶対にこの映画見ちゃダメです。頭おかしくなりますから。

最後にフォローというわけでもないですが、一応ポッピンQの良いところも話しておきましょう。とりあえず、キャラはカワイイです。キャラデザも声優もごりごりの売れ線ですから、そりゃ魅力は感じます。まぁでも、脚本と同じように中身は空っぽなんですけど。最初はバラバラだった彼女たちが次第に一丸となって仲間になりますが、その心情の変化が見えてこないですし、それぞれ悩みを抱えていた彼女たちが最後に悩みを解消することになりますが、その理屈もはっきりとしないです。ん? 全然褒めていないな…。

ポッピンQ最大の売りともいえる3Dダンスシーン、これに関しては手放しで賞賛できますね! 監督がプリキュアを手掛けていた3DCGディレクター出身ということもあり、ここのクォリティは凄まじかったです。これまでプリパラ、アイカツ!、ラブライブ!など数々の高クォリティ3Dライブを見てきましたが、ポッピンQはそれらと比べても一段高みにあり、これぞ日本の最先端と言うべきレベル! モデリングもモーションもめちゃくちゃ綺麗なので、これは一見の価値あり! この一見の価値しかなし! とも言えますが

ポッピンQ

著者/訳者:東堂 いづみ

出版社:小学館( 2016-12-20 )

定価:

Amazon価格:¥ 1,404

単行本 ( 190 ページ )

ISBN-10 : 4093864640

ISBN-13 : 9784093864640


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  1. 予告を見てダンスと聞いた瞬間「もしやそれ(ダンス)がやりたいだけなのでは…」なんて嫌な予感がしていましたけど、まさか本当にそれだけだったとは。

  2. もう突っ込まれてる方がいますがシンゴジラと君の名はは東宝ですね
    東映の今年の稼ぎ頭はワンピースだったはずです

    >本当に売れ線をぶっ込んでジューサーで掻き回しただけの程度の低い内容でした

    君の名はを「売れ線要素ぶっこみまくったから売れただけのゴミ糞駄作映画」と
    某邦画監督は仰っていましたが、普通は売れ線要素ぶっこみまくったらバランスがぐちゃぐちゃになって
    どっちらけるんですよね、この作品のように
    売れ線入れまくって売れるって逆に相当に難しいとこの作品見て改めて実感しました
    プリキュアの受け皿にしたかったらしいですけど客層完全に読み違えてますよね・・・

    • あ、あれはジョークだから…! という言い訳も通用しないほど、お恥ずかしいミスでした…。申し訳ないです。

      >売れ線要素ぶっこみまくったらバランスがぐちゃぐちゃになってどっちらける
      「君の名は。」も売れ線要素は満載でしたが、ジャンルを超えて節操なしに注ぎ込んだものではなかったですし、何より脚本の力で総てを調和させていました。ポッピンQ見ながら、「やっぱり君の名は。ってすごかったんだな~」と再評価していましたよ(笑)

      >プリキュアの受け皿にしたかったらしいですけど客層完全に読み違えてます
      今もプリキュアを好んで見ている私には本来相性は良かったはず…。でもこれだけ破綻したシナリオを、プリキュアっぽいと軽々しく呼んでいいのでしょうか? それはプリキュアに対する冒涜では…。

  3. 酷評過ぎて、お勧めしたこっちが申し訳なくなってきました…(笑。
    私なんかは頭すっからかんにして見ている人間なので、その場のノリと雰囲気で割と楽しめてしまいました。
    ただ見終わった後に冷静に振り返ってみると、「ん?」となる箇所がちょいちょいあったんですよね。私でさえそう感じるんですから、しっかり考えて見る人にはかなり気になったと思います。
    あとキャラデザや声優はオタ向けなのに、ストーリーはどちらかというとファミリー向けっぽいというギャップを感じました。幅広い層を狙ったのかもしれませんが、その辺も裏目に出てるんでしょうねぇ。

    • ポッピンQは元から自分で観に行くつもりでしたので、どうぞお気になさらず。堕落人さんの感想で、期待値が上がったのは事実ですけど(笑)

      ポッピンQは何を目的として観るかですね。キャラの可愛さとか、作画の綺麗さとか、雰囲気や世界観などを重視する人なら悪くない映画だったんじゃないでしょうか。事実、Twitterでの感想を拾ってみると概ね好評で、私みたいにボロクソ酷評している人ってほとんどいないですし、正しいのは堕落人さんの見方だったと思います。間違った人種が間違って観に行くと、こういう感じになっちゃうよという感想だと思ってくださいませ。

      >キャラデザや声優はオタ向けなのに、ストーリーはどちらかというとファミリー向け
      そうですねー。どこに対象年齢を置いているのか正直よくわからない映画でした。「君の名は。」は老若男女楽しめる映画ですが、メインとなる対象は20歳前後の若者だとはっきりしています。万人受けする映画を目指すからといって、中心を定めず手広く年齢層を拡大することが正解だとは思えないですね…。

ABOUTこの記事をかいた人

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。