ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 映画評

序が進化であり、破が変化であったならば、Qは開化と呼べるかもしれません。1から10まで作り替えられたシナリオは、まさに新しいエヴァンゲリオンの世界が開けた気分。その清新な空気を胸一杯に吸い込めば、同時に懐旧の念も去来する。昔私が初めてエヴァを見たときのあの興奮。よもやエヴァに熱中していたあの頃の高揚感を、今になって再び取り戻させてくれるとは…。

冒頭、突発的に始まったエヴァらしからぬ宇宙バトル。シンジ君が意識を取り戻した場所は謎の戦艦内で、そこではミサトさんが艦長として指揮を取り、使徒らしき何かと戦っている。ミサトさんが艦長? リツコさんらの容貌が様変わりしているのは何故? この見知らぬ顔触れは何者? もうまったく何が何だか状況が掴めません。

混乱する私とシンジ君を余所に、ミサトが指揮する巨大戦艦ヴンダーと使徒(?)との戦いが始まる。その戦いの迫力たるや凄まじいの一語で、ふんだんに手間とお金をかけたであろう究極の映像美。海面から浮上し一面に開けた海洋景色(てっきり私は宇宙だと思っていた)の中、雄大に翼を広げる巨大戦艦ヴンダーの機影は惚れ惚れするほど美しくカッコイイ。この時点で私は何1つ理解できるものがなかったですが、とにかく映像美のすごさに唸っていました。

ただし、ちょーーっちエヴァらしさを逸脱しすぎていた感は否めず。私がエヴァで好きだったのは、近未来SFロボットアニメでありながら戦い方が徒手だったりカッターナイフだったりへなちょこライフルだったり、やけに原始的なところなんですよね。それが今回のような未来感満載の巨大戦艦に強力無比なレーザー武器とか出てきちゃうと、結局ガンダム的な普通のロボットアニメと変わらないな~と感じてしまう。

戦闘を終えると待望の事情説明。先程からシンジの様態をチェックしていた時折関西弁が混じるカワイイ女の娘は、名を鈴原サクラというらしい。そう、彼女はあの鈴原トウジの妹であり、なんとこの世界は14年の月日が流れた世界だったんですね…。大きく前提をひっくり返す大胆なシナリオ改変に、QはTVアニメ版とは完全に乖離した別物語なのだと実感

ミサトらは既にネルフ所属ではなく、フォースインパクトを画策するネルフの敵対組織Wille(ヴィレ)として、エヴァを殲滅するため戦っている。しかし、シンジにはその詳しい理由が説明されず、協力もさせてくれない。挙げ句はアスカに罵倒される。にべもなく除け者扱いされたシンジ君はすっかりふて腐れ、得意の出奔。ミサトさんの制止を振り切り、綾波っぽい人と共に今度はかつてネルフの要塞があったジオフロントへと身を移します。

そこで待っていた渚カヲルとの出逢い。ピアノの連弾をきっかけに急速に親密さが増し、シンジの心を埋めてくれる存在に。目を覚ましたらいきなり14年後の世界に放り出されて、何故か周りは異様に冷たくて、父親は相変わらず取り付く島がなくて、助けてあげたはずの綾波はスーパー無愛想で、そんな1人で不安と孤独に打ち拉がれているときに、優しく自分を理解してくれる友人が現れたら、そりゃあノンケでも心惹かれちゃうのはしょうがないよね!

カヲルを通じて少し明るさを取り戻せたシンジ君でしたが、この世界を壊滅させた原因が自分にあるという衝撃の事実を知って、再び不幸のどん底に。破のラストで綾波を助けようとした行動が引き金となり、サードインパクトを引き起こしてしまっていたんですね…。案の定、「僕のせいじゃないよ!」と逆ギレして自分の殻に閉じこもるシンジ君。

そんな彼に向かってカヲル君は言う。セントラルドグマ最深部にあるロンギヌスの槍ともう1つ何とかの槍(すいません、名前忘れました)を引き抜いたら全部やり直せると。

親父の秘蔵エヴァ13号機に同乗したシンジとカヲルは共にセントラルドグマを降下。目的の槍を目前にした時点で、急にカヲル君が「やっぱやめよう」「どっちも同じ槍っぽいからなんか違う」と心変わり。カヲル君がヤバイって言っているんですから大人しく従っておけばいいのに、シンジ君は変に意固地なところがあるので、忠告を無視してムリヤリ槍を引っこ抜いてしまう。すると、突然巨大綾波が膨らんで爆発してガフの扉が開いてフォースインパクトが起きそうになって……この辺は難しくて一度見ただけじゃよく理解できないところでしたねぇ。

でもまぁ、槍を引っこ抜く前のエヴァ初号機と弐号機の対決(厳密には13号機と2号機改)は純粋に燃えましたよ! エヴァVSエヴァってありそうで今までなかったシチュエーション(Airで量産型との戦いは描かれていましたが)。シンジを綾波が守護し、アスカを後方のマリが援護する。エヴァパイロット同士が敵味方に分かれての熱い戦いは大変見応えがありました

今回は備忘録的にストーリーの流れをざっと書き記してみましたが、なにぶん一度見ただけで内容を正確に理解できるアニメじゃありませんので、事実誤認や解釈の間違いはご容赦ください。

まったくの新説でありながらも、この迂遠で難解で独創的なシナリオはまさにエヴァそのもの。ですが、昔ほど精神・心理描写に傾倒していないため、話の大まかな流れ自体は把握しやすい。終わったあと何もわからずぽかーんとしたままとぼとぼ劇場をあとにする……なんてことはもうありません(エヴァ初見の人はともかく)。ちゃんとエンターテインメントとしての体は成していましたね。

予告で流れた次回作のタイトルは、シン・エヴァンゲリオン:||。最後の文字は演奏記号の反復記号ですね。リピートと読めばいいのかな? 弐号機と八号機が合体して戦うとか、ファイナルインパクトを防ぐ戦いとか、一気に特撮ヒーローっぽい世界観になっていましたけど(笑) でもまぁ、最後はそれぐらい単純明快な方がいいかも。「現実に帰れ!」みたいな終わり方よりは。

とはいってもこんな予告、正直何の参考にもなりませんけどね! だって、「破」終わりに流れた「Q」の予告版はまったく今回と関係ないものでしたから! 加持さんなんて一瞬たりとも出てこなかったよ! エヴァ6号機と帯同する8号機!? 嘘ばっかし!! アスカが眼帯して出てくる以外全部でたらめです!(笑)

何にせよ、「:||」でエヴァンゲリオンをどう終結させてくれるのか楽しみ。進化・変化・開化ときたからには、最後はすっきり浄化させて欲しい!! 長きに渡るエヴァの妄執に一区切りを! そのためにも人気が風化する前に、声優さんが老化する前に早く続きを作ってよね!

★その他の感想★

※上映前の予告「テッド」が場内で大ウケだった
※同時上映された「巨神兵東京に現わる」は東京がメチャクチャに破壊されて「うひょー!」とするだけの映画だった
※エヴァパイロットが加齢しないのはエヴァの呪縛らしいですけど、28歳に成長したアスカらも見てみたかった
※細身の身体とプラグスーツの組み合わせに改めてエロスを感じた
※カヲル君のホモ臭さは健在。彼のセリフは総てホモ的な意味に聞こえる(笑)
※人差し指で弾いていたシンジ君のピアノが突然上達。でもチェロを弾けるぐらいだから、元々音楽的素養はあった?
※入り口に脱いだ制服が置いてあったのに、「着替え中だったなんて!」と綾波の裸を覗いたシンジ君は確信犯だと思った
※途中でシンジがトウジの制服を着ていたのには何か深い意味が?
※マリの存在感がイマイチ薄い。今のところ、わざわざ追加された意味がわからない
※だけど、このどんよりした作品の中で、ネアカなマリの存在は貴重
※ラストでシンジ・アスカ・綾波が以前のような関係に戻りつつあったのは次回に向けて微かな希望
※せっかくキャラメルポップコーンを買ったのに、映画に集中しすぎてほとんど食べずに捨てた
※上映後、残酷な天使のテーゼを斉唱したり三三七拍子するような空気ではなかった

2012年11月17日

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  1. 楽しめたようで何よりです。
    私はイマイチ楽しめなかったですが…。

    高揚感もエンタメ感もカタルシスも全然感じられなかったなあ。
    序盤はナディアのパロディ含めて、ワクワクしたんですけどね。

    全体的にシンジいじめの印象が強いんですよね。
    周りは敵意むき出しでそのくせ説明してくれないし、
    カヲルが説明するまでイライラした。
    TV版みたいにコミュ不足でグチャグチャになるのは勘弁して欲しい…。

    シンで持ち上げるためにここまで落としたと信じたい。

    テッドの予告やってたんですね。
    大勢でアレ見て笑うのはさぞ楽しかったでしょうなあ、羨ましいw
    公開が待ち遠しい。
    こっちは変態仮面でザワついたくらい…w

  2.  パウンだーさん
    序のラミエル戦、破のゼルエル戦に比べると見劣りしますが、TV版よりメッセージ性を控えて、アクション性を増やしたのは成長部分だと思いますね。カタルシスは次回のファイナルであればいい。

    >全体的にシンジいじめの印象が強い
    ミサトさんはむしろ背中を押してくれた立場だったのに、急に手の平返したのはひどい(笑) とはいえ、ミサトさんも立場あるポジションだけに、みんなの前ではああいう対応しかできないでしょうけど。

    >(テッド)大勢でアレ見て笑うのはさぞ楽しかったでしょう
    私は初見だったので一緒になって笑っていましたね。よくあるディズニー的な夢ある映画かと思ったら最低な映画だった(笑)

    上映前は若干ピリピリしたムードだっただけに、最初はみんな控えめにくすくす笑いだったんですが、内臓音声のあたりから声を出して笑い始めました。R15というところにも爆笑。

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