僕だけがいない街 映画評(微ネタバレ)

スーパーガッカリエンド。絶賛放送中のアニメは佳境に入り、今まさに最後の盛り上がりを見せている僕だけがいない街。私はアニメを全部見終わってから映画を観に行こうと考えていましたが、先頃アニメで真犯人が明らかになりましたし、それならばと一足先に映画でラストを見届けることにしました。でも、そのラストが笑えるほどにひどかった!!

先に擁護(?)しておきますけど、映画としての出来は全然悪くありません。漫画の実写化が軒並み悲惨な末路を辿っている中、僕だけがいない街はものすごく頑張っていたと賞賛されるべきクォリティだと思います。監督や役者を始めとして、僕だけがいない街の世界観を一生懸命再現しようとする作品愛が強く感じられましたから。

藤沼悟役の藤原竜也さんは相変わらずの演技派。殺害された母親を自宅で発見するシーンはとにかく真に迫っており、スクリーンを通して悲しみが存分に伝わってきて、思わずもらい泣きしそうに。母親の亡骸を目の当たりにしたときの尋常じゃない呼吸の乱れ方がリアルで、息遣いでこれだけ感情を表現できるのはさすがと感心。失礼ながら、アニメで悟を演じている満島真之介さんとは、役者としての格の違いを見せつけていましたね!

リバイバルで昭和63年に戻ったあとの幼年期の悟を演じていた中川翼君も、これまた演技が超上手くて。映画では大人目線のモノローグはあまり入らないんですが、それでも子供の姿のままで中にいる大人の影を感じさせてくれるほど。セリフにしなくても微妙な表情だけで語れるところが、既にプロの役者。最近の子役は本当に感心させられますね。2000年以降に生まれている子供たちは優秀だわ。

鈴木梨央ちゃんは、ちゃんとアニメで見た通りの雛月加代になりきれていてすごかった。母親から苛烈な虐待を受けている役どころなのに、つやつやの髪の毛で育ちの良さが隠し切れていないところは気になりましたが、そこはまぁいいでしょう(笑)

映画は“加代を虐待から救うことが、未来での母親を助けることになる”というロジックが不明瞭で、ここはもう少し劇中で丁寧に説明しないと、初見では理解が追いつかなかったかもしれません。アニメを見ていても同様の戸惑いはありましたが、映画はもっと説明不足なんで。特に加代を3月1日以降も存命させることの意義が映画では伝わってこなかったのは良くなかったかな。

ですが、それ以外はほぼ文句なしの出来映えで、原作(私はアニメしか見ていませんが)にほぼ忠実。映画としての尺の都合上、所々シーンは削られているものの、ここは外しちゃダメだろという重要なポイントは外していませんし、あのロマンチックな枯れ木のクリスマスツリーなんかもちゃんと再現してくれていたのが個人的には嬉しかったです。

逆にアニメではわかりづらかったところ、何故悟が母親殺しの犯人だと誤解されたのか、何故愛梨の家が放火されたとき悟が助けにこれたのかなどは、映画の方が説明がスムーズでわかりやすかったぐらい。

愛梨は逃走中の悟に緊急連絡用として自分のケータイを預けていて、そのやりとりを知らない犯人は、悟になりすまして「その場を動かないで」というメールを愛梨宛に送る。それを見た悟は当然犯人の手口であることに気付き、慌てて愛梨の安否を心配して確かめに行く。すると、愛梨の家から火の手が上がっているのが見えた……というような。

恐らくこれは映画ならではの改変だと思いますが、スマートな良改変だったと評価したいです。変えちゃいけないところは変えず、変えた方がいいところは変える、その判断が的確。漫画の実写映画化としてこれ以上を望むのは酷だといえるほど、加代の虐待事件解決までの流れは完璧でしたね~。これから映画を観に行かれる皆さんは、加代が救われるシーンを迎えたらそそくさと席を立って帰りましょう(笑)

悲劇はこのあと。ここから原作のストーリーラインから離れて映画独自のラストへと向かっていくのですが、これがもうねぇ…。真犯人の八代は「よくもこの僕の計画を…」みたいな小者と化し、今までの緻密なストーリーは何だったのかと思うほど安っぽいドラマに成り下がり、急激に匂い立ってくる2時間ドラマ臭(笑) あれ? これって土曜ワイド劇場だったっけ!?

2時間ドラマというと、犯人が何故か崖まで追い込められて、つらつらと犯行動機を語り始めるお約束が有名ですけど、そのパターンがまんま踏襲されていたのは笑いました。さすがに場所は崖ではなくビルの屋上でしたが、やっていることは同じ。どこかで聞いたことのあるセリフの応酬と、どこかで見たことある安易な展開と、今時それはないだろうとツッコミたくなる噴飯物の結末。

何の予備知識もなくこの映画を観に行った人は、途中で脚本家が急死したんじゃないかと心配されていると思いますよ(笑) 急逝した脚本家の代わりに、別の脚本家が駆り出されて結末だけ代筆してもらったみたいな。まぁ、実際それと似たような状況ですから、間違っちゃいないんですけど…。

ラスト間際までは紛れもない名作だったのに、ラストで突然急ブレーキがかかって駄作になるなんて、改めて脚本の力って大事なんだなぁと再認識させてくれます。しかし、原作再現率に関してはホント見事なものでしたから、ちゃんと原作を完結させたあとに映画化の流れだったら、それこそ最高の映画になっていた可能性はありますね。原作未完のうちに映画を作りを始めて、映画ならではのラストを用意させてしまったことが、唯一にして最大の失策でした。

僕だけがいない街 (8) (カドカワコミックス・エース)

著者/訳者:三部 けい

出版社:KADOKAWA/角川書店( 2016-04-26 )

定価:

Amazon価格:¥ 626

コミック ( 210 ページ )

ISBN-10 : 4041039150

ISBN-13 : 9784041039151


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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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