アニメミライ2013 映画評

何やらフライングシャインのエロゲのようなタイトルですが、アニメミライというのは2010年度から始まった文化庁主導による若手アニメーター育成プロジェクト。アニメ会社各社がそれぞれ短編映画を製作し(龍 RYO、アルヴ・レズル、デスビリヤード、リトルウィッチアカデミア)、4本立てのオムニバス形式で上映されています。

そんな試みがあること自体初耳だった私ですが、パウンだーさんに誘われ興味が湧いてきたので一緒に観賞することに。内容は一切伏せずににネタバレ全開の感想となっておりますので、これから映画をご覧になる予定がある方は注意してください。

龍 RYO 45点

幕末という馴染み深い舞台設定のおかげで、人間関係や世界観の説明を省略してすんなり本題に入れるメリット。しかし、手垢がベタベタ付いた幕末モノだけに、30分で「違い」を見せつけるのは難しさがあります

結論から先に述べますと、「違い」を見せつけるまでには至りませんでした。面白くないこともなかったですけど、取り立てて他の時代劇と比べて光る個性があったわけでもなかったので。

個性を生み出すのは、史実に存在しないオリジナルキャラクターであるRYOの役目であるはずなのに、どうにも彼のキャラクターが弱いんですよ。坂本竜馬に見初められ護衛役となった彼ですが、皮肉にもその坂本竜馬という存在がRYOのキャラクターを殺してしまっているのです。

皆さんもご存知のように坂本竜馬というのは非常にキャラの濃い人。この作品でも竜馬の魅力は前面に出されているため、主役であるべきRYOが完全に影に隠れちゃっている。物語はほぼ竜馬中心で、RYOは特に目立った活躍シーンがあったわけでもない。最初は冷酷だった人間性が、徐々に心を持っていく変遷は描かれていましたが、それも竜馬の存在あってこそ。結局、龍馬とRYOのどちらを中心に描きたかったのか最後まであやふや。フィクションの人間が現実の人間にキャラ負けしていたら世話ないですよ。

良かった点は殺陣のシーン。OVA版るろうに剣心のような、リアルなスピード感がいい。こういうアクションシーンをもっと増やして、RYOが主人公らしい活躍をアピールしてくれれば印象は変わったでしょうに、惜しさが残ります。

途中、RYOがネコミミを付けたのは製作者の遊び心だったんでしょうが、もっとさりげなくやってもらわないと。シリアスの中で突然ネコミミを放り込まれると混乱します。

アルヴ・レズル -機械仕掛けの妖精たち- 10点

今回最大の問題作。私は開始5分で理解することを放棄しました。

西暦二〇二二年。技術的特異点へと加速し続ける近未来。ナノアセンブラ技術の進展とともにマン・マシン・インターフェースは長足の進歩を遂げ、神経細胞を模した極微細無線通信装置「ナーヴセラー・リンカー・ナノマシン(NLN)」が完成、急速に普及していった。NLNは、人体の神経系と外部ネットワークとの無線通信を実現、既存のディスプレイ/キーボード、或いはタッチパネルというボトルネックを回避し、人間の意識とネットワークをシームレスにリンクさせることを可能にしたのであった。だが、人と機械の垣根を崩すその技術は、数万もの人の意識をネットワークの彼方へと失わせる災厄“アーリー・ラプチャー”を引き起こしてしまう。そんな中、御影礼望(声:福山潤)は、妹・詩希(声:喜多村英梨)の魂を取り戻すために、日本の最南端に浮かぶ巨大な人口島、沖ノ鳥島メガフロートシティ(OLMC)へと到着する……。

こんなもん30分アニメでやろうとすんなぁぁぁ!! この説明だけで30分かかるだろっ!!

こんな作者の脳内にしかないような世界観を「お前ら当然知っているよね?」的前提で話を進められては困ります。開始直後から難解なタームをちりばめているくせに断片的な説明しかありませんし、内容詰め詰めで目まぐるしく場面が展開していくもんで、まったくストーリーについて行けません。

要するに、精神をネットワークとリンクする技術を利用したネクストライフという装置でバーチャル世界を体感していたら、何らかのトラブルで魂が肉体に正しく帰還できなくなったという話ですよね? そして、妹詩希の身体には、見知らぬ別の誰かの魂が宿っている状態っぽい。

不運な事故に遭いとっても可哀想な詩希ちゃんですが、彼女の性格が微妙にウザイのでどうも感情移入しにくい。

詩希「私、お兄ちゃんに告白があるんだ」
礼望「え、告白って…!?」
詩希「あれ、もしかして妹に愛の告白されると思っちゃった?」

ウゼェ!! こんな感じの強烈にラノベ臭い会話劇に辟易します。

事故によって別人格が憑依してしまった詩希は、研究所みたいなところから逃げ出して御影礼望の家にやってくるのですが(別人格のはずなのになんで詩希の兄の家に来たのかは謎)、全裸に近い彼女の姿を見て礼望は、とりあえず妹の部屋にある服をなんでもいいから着ろと着替えを促すのです。

で、その数ある服の中で彼女が選んだのが、白いひらひらのワンピースというセンス。君、追われているんだよね? この緊急事態に、何故男受けを狙ったあざとい白いワンピースを選んだの? 何故逃走に不向きなパンプスを履こうと思ったの? 自分の精神と肉体が乖離していることを説明するために、何故「私はこんなにおっぱいが大きくなかった」とかリアクションに困る発言をするの?

自分が家に逃げ込んで主人公を巻き込んだくせに、あなたを巻き込めないとかわけわからん発言していたのも意味不明。俺も一緒に戦うよとカッコイイこと言っているつもりの主人公はダサかったですし、その後始まったバトルも最高にダサい。とにかく全部がダサイ。そもそもタイトルがダサイ

ラストで、詩希の肉体に宿った彼女に「なんて名前を呼べばいい?」と礼望が問いかけるのですが、そのときの答えが「ポエムと呼んで」だったのは思わず吹き出しそうになりました。ポエムって(笑) イヤだよ! そんな恥ずかしい名前で呼びたくないよ! 別のにしてよ!

余談になりますが、映画鑑賞後に日本橋のメロンブックスへ立ち寄ったとき、パウンだーさんがおもむろにアルヴ・レズルの小説を発見。これ原作あったんですか!!

でも、これでようやく合点がいきました。どう考えても30分映画でやるような設定じゃなかったですもん。礼望は妹の魂を取り戻すため、彼女は自分の肉体を取り戻すため、共に協力してこれから頑張ろうという「第2話へ続く!」的な終わり方も原作通りだったわけね。なるほどなるほど。……まぁ、だからといって、別に評価が改まることはないんですけど。

デスビリヤード 70点

ここは一体どこなのか。どうしてここへ連れてこられたのか。まともな説明が一切なされないまま、突然命を賭けたビリヤード勝負を強制させられた縁もゆかりもない男と老人。デスゲーム系が大好物である自分としては、事前期待度No.1。

ルールは基本的なエイトボール。しかし、通常のビリヤードと勝手が異なるのは、球には数字の代わりに臓器の絵が描かれているということ。それには一体どういう意味が? もしかして、ポケットされるごとに臓器が失われていくのか!? ……と思ったら、別にそういうわけでもありませんでした

更に、プレイヤーの心拍数が連動してボールに映されるという。それには一体どういう意味が? もしかして、その情報を利用して何か勝率を高める算段を思いつくのか!? ……と思ったら、別にそういうわけでもありませんでした

とにかく、意味ありげな設定の数々がことごとく回収されないんです。本当になんだったの? これらの設定。ただのマクガフィンだとするならあまりにひどい。

そして、ビリヤード対決は完全にオマケだったという拍子抜け。生死を賭けたギリギリの状況下で見せる駆け引きを見たかったのに、淡々とビリヤードしているかと思ったら、途中、負けそうになった男が激昂して老人に殴りかかり、殺害してしまうというまさかの暴力展開ですよ。一部始終を目撃していたバーテンダーは、「殴り殺してはいけないという条件は言っていない」とそれを肯定。少し釈然としませんが、“ルールの盲点を突いて勝つ”という論理は好きなので、一応納得しました。

なのに、死んだはずの老人がおもむろに復活。そもそも実は2人とも既に死んでいて、ここは天国と地獄の分かれ目であったことが判明。このビリヤード対決は、どちらが天国へ行き地獄に落とされるかを判別するための最終試験だったわけです。

自分の地獄落ちを確信した男は泣き叫び、好々爺ぶっていた老人は不敵な笑みを浮かべ、バーテンダーに何かを囁いた。そして、運命の判決が下される。果たして、地獄に落とされてしまうのはどちらなのか?

とっても気になりますよね? 老人が何を囁いたのかも気になりますよね? 案内人の女は視聴者の好奇心を代弁するかのように、その謎をバーテンダーに問いかけます。ところが、彼は「秘密です」の一点張り。そのまま終了。おいっっっ!!!

まさかのオチ投げっぱなしじゃないですか!! それはないでしょうよ~~!! 2人の運命は視聴者の想像に委ねるってこと? そんなバカな! 推理を促すヒントすらない二者択一なんて、想像しようがないです! ただオチが思いつかなくて、暈かして誤魔化したとしか思えない結末ですよ!

多くのマクガフィンと推理不能のオチを残されて、視聴後のモヤモヤ感が半端ない。せっかく設定自体はすごく好みだったのに、この気持ち悪さは大きな減点ですよぉ…。もし私が理解できていないだけなら、誰か答え教えて。一緒に観ていたパウンだーさんに聞いても理解できないと仰っていましたんで。

リトルウィッチアカデミア 95点

何やらAtelier KAGUYAのエロゲのようなタイトルですが、そのエロゲと同じ点数で讃えたくなるほどの面白さ! 若手アニメーター育成が趣旨でありながら、もはやこれ単体で完全に商品として仕上がっているじゃないですか! それほど別格な映画でした!

ストーリーは単純明快。魔法学校に通う魔女っ娘見習いたちが、ダンジョンでの宝探し試験を受けている最中、誤ってドラゴン封印を解いてしまったという王道展開。登場キャラクターも、元気いっぱいだけど未熟で空回り気味なアッコに、心配性なロッテ、マイペースなスーシィ、嫌味なお嬢様ダイアナと皆見た目まんまの性格をしているので、これまたわかりやすい。

それだけ捻りが少なくて単純な内容ともいえるんですけど、短編映画でこの直感的なわかりやすさは非常に大事。おかげですっと物語に没入できますもん。

驚嘆すべきはその超作画。何気ないシーンでもうねうね動き、ころころ表情が変わるのがすっごい贅沢です! ただ作画枚数が多いというだけでなく、キャラクターたちが本当に魅力的に動き回る。良い意味で“無駄な動き”がたくさんあって、それが活き活きとしたコミカルなキャラクター描写に繋がっているんですね~。

最後のドラゴンとの戦いでは、スピード感溢れる空中戦を展開。縦横無尽に躍動するキャラクターを捉える構図や演出が1つ1つ練られていて、迫力感満点のスペクタクルな興奮が味わえました。これぞ映画館のスクリーンでしかお目にかかれないスペシャルなアニメですよー!

壮大な設定やら、視聴者への謎かけやら、そういうのは長編作品でやるべき事柄。30分という限られた時間の映画において何が必要で何が不必要なのか、それを最も弁えていた作品であると言えましょう。他の3作品が総じて“TVアニメの第1話”みたいなテイストだったのに対し、この作品だけが30分間目一杯視聴者を楽しませてやろうとするエンターテインメント精神に満ちていた。それでいて、「一番続きを見たい!」と思わせるのがこのリトルウィッチアカデミアなんですから。

とにかく、画面を観ているだけで楽しくなること請け合い。私のようなアニメオタクだけでなく、一般人や子供もまで幅広く愛される素養がありますし、ジブリやディズニーに匹敵するレベルとまで褒め称えても決して過言ではないと思いますね。是非、これ単品で映画一本作り上げて欲しい!

TRIGGERという唯一私が聞いたことないアニメ会社でしたが、このアニメを通して巨大な才能を感じました。若手アニメーター中心でこれだけ高クォリティの作品が生み出されるならば、日本のアニメの未来は明るい

総括

鑑賞後、貴方は必ず誰かに訊きたくなる。「どれが一番面白かった?」と。貴方は必ず誰かに言いたくなる。「これが一番面白かった」と。

ゆえに、このアニメミライは友人と一緒に観に行くのがベスト。鑑賞前にスタッフからアンケート用紙を手渡され、評価することが最初から前提となっている映画ですので、きっと鑑賞後は友達との感想が盛り上がるはず。私もサイゼリヤでこの映画についてパウンだーさんと語り合っていたことが、映画本編以上に楽しかったですから~。

パウンだー LWA>デスビリ>アルヴ>RYO
浅生大和  LWA>デスビリ>RYO>>>>>タイトル忘れた

ちなみに、パウンだーさんと私の評価はほぼ同じ。私はアルヴ・レズルの評価がダントツで低いですけど、こういう微妙な作品も話の種として盛り上がれたりするものです。実際、鑑賞後一番たくさん語っていたのはアルヴ・レズルだったなぁ(笑)

ブログ・Twitterを中心に評論家気取りの一般人が急増している中、上から目線であれが良いこれが悪いと偉そうに評価できる映画は、絶対受けると思う。映画そのものだけでなく、その後の感想も含めて楽しめる映画ですので、どうぞ皆さんもご覧あれ。そのときは是非私に聞かせてください、「これが一番面白かった」を

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  1. 良いですねぇ。私もそうして、なんのアレも無く普通に観て、何人かであーだこーだ、やりたいな…RT @ndsknet: 【なでしこやまと】 アニメミライ2013 映画評 http://t.co/MvwTQhlpNe #アニメミライ

  2. TRIGGERは「天元突破グレンラガン」「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」
    「ブラック★ロックシューター」などを手がけた、元ガイナックスの大塚雅彦さん、
    今石洋之さんらが発起した新興会社ですね。
    アカデミアのはっちゃけたコミカル作画や”ブワッ”とした全画面的な光表現は
    まんま今石演出。それだけに観たくなります。

  3.  ゲストさん
    聞いたこともないTRIGGERという会社でしたが、パンフレットで元GAINAXメンバーが中心となって設立した会社だと知ってなるほどなと。言われてみれば、パンティ&ストッキングwithガーターベルトの面影あったりしますもんね(グレンラガンは見ていません)。

    今後どのようなアニメを手掛けていくのか、注目していきたいと思います。

  4. RT @DaisukeP: 良いですねぇ。私もそうして、なんのアレも無く普通に観て、何人かであーだこーだ、やりたいな…RT @ndsknet: 【なでしこやまと】 アニメミライ2013 映画評 http://t.co/MvwTQhlpNe #アニメミライ

ABOUTこの記事をかいた人

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。