ウィナーズサークルへようこそ書評

馬券を買ったことすら一度もなく、競馬の知識は専らダービースタリオン(インブリードとか予後不良とかは知っている)。そんな競馬にまったくと言っていいほど無縁な私でも、この漫画にはハマってしまいました

馬券上手な人間が集まり、更なる的中率向上を目指して研究を重ねる相互扶助組織ウイナーズサークル。彼らが競馬はずぶの素人である主人公山川七雄に目を付けたのは、彼が競馬予想において非常に役立つ、ある特別な能力を有していたから。

その特別な能力とは、卓越した相馬眼。元々漫画家志望であるナナオは常人よりも観察力に優れ、パドックでじっくりと競走馬を吟味すれば、過去の写真と見比べて馬体の増減などを的確に見抜くことができる。その馬の好不調が手に取るようにわかるため、ほぼ予想を外さないという競馬の天才です。

これだけですと、たまたますごい特殊能力を持っていた主人公が、周りからすごいすごいともてはやされるラノベ的ストーリーを想像しがちですが、この作品の肝は、主人公がバカであるがゆえに自らの才能にまったく気付いておらず、周りからその才能をいいように利用されているところ

ウイナーズサークルのメンバーからすれば、ナナオの予想にあやかって馬券を次々的中させて行きたいのは山々なれど、彼自身が競馬の天才であることに気付かれてしまうと、自分たちは用済みとなってしまうので、なんとかナナオには予想下手だと思い込ませておきたい。そこで予想を的中させながら、自分は競馬が下手だと思い込ませるために様々な工夫を仕掛けるんですね。こういうややこしい設定を思いつくのは、さすがLIAR GAMEの甲斐谷忍さんだと感心させられます。

ナナオを騙くらかす首謀者的な存在は、ベニコというセクシーな女性。実質この漫画の主人公と言っていいほどで、私もキャラクターとして彼女のことが一番好き。甲斐谷さんって決して画力が他の漫画家さんより秀でているわけではなく、むしろデッサン的には相当怪しいレベルなのに、なんでこんなに女性キャラが魅力的に感じられるんだろう…? 甲斐谷さんの描くラフなTシャツとジーンズ姿の女性は至高だと思う。

ナナオの相馬眼に頼った競馬必勝法は必ずしも万能ではないため、それ以外にも作中にで次々独自のロジックによる競馬必勝法が出てくるのが面白いです。実際の競馬マニアからすれば、もしかすると机上の空論に過ぎないのかもしれませんけど、前述のように競馬にまったく詳しくない私にとっては、ただただそのメソッドの発想力に唸らされるばかり。競馬する人って本当にいろんなことを考えているんですね。その努力を他に向ければって思いますけど(笑)

競馬って、オッサンが1人で新聞睨み付けながら一喜一憂する孤独なギャンブルだと思い込んでいましたので、こうやって仲間同士で知恵を出し合って的中率を高めるということそのものが私にとっては新鮮。こういう仲間がいれば、確かに競馬の面白さって何倍にも膨れあがりそう。思わず自分も一度競馬場に足を運んでみたくなるような作品でした。

ウイナーズサークルへようこそ 1 (ヤングジャンプコミックス)

著者/訳者:甲斐谷 忍

出版社:集英社( 2012-04-10 )

定価:

Amazon価格:¥ 648

コミック ( 229 ページ )

ISBN-10 : 4088793099

ISBN-13 : 9784088793092


ABOUT

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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  1. 甲斐谷先生はとにかくこういった、だます事そのものよりも、だましという事態が今まさに発生する
    その瞬間にある「人のウラをかく、かかれる」というカタルシスに対する執着がすごいですね。
    引っかけられたキャラによる「あ―――――――――ッ!!!」という驚きのコマ(縦長)が先生の作品にはほぼ全部
    出てくるあたりにも表れています。
    イリーガルな着想と人情機微を把握した心理学的工作で戦うライアーゲームのアキヤマしかり、
    球界最強のクソボールと脱法やきうでペナントレースを制圧するワンナウツの渡久地東亜しかり。
    広義に捉えれば相手の隠している真相を見抜く小田霧響子や、世間がワインに抱く蒙を啓く佐竹城も
    同類の主人公と言えるかもしれません。

    >甲斐谷先生のデザイン
    とにかく立ち姿がうそ臭いまでにスラッと決まってるのがでかいと思います。
    美しい女性はもちろんのこと、小太りのオッサンや心醜い老怪までビッシーと胸張って立ってたり
    するので、誰も彼もが美しいと言い切るわけにはいかないですけど。
    個人的にはヨーロッパ系のファッションデザインのようにスマートかつラフな、ヒトの輪郭的な雰囲気を
    重視したシルエットと、男性のスーツの着こなし方に注目する事が多いです。

    あえて難癖をつけるとしたら手書きの文字がものっそい見づらいことくらいでしょうか(苦笑)

    • LIAR GAMEが顕著ですが、甲斐谷さんは「裏をかく」ことに関しては天下一品ですよ。私はあらゆる作品を先の展開を予測しながら視聴するタイプで、その予測が当たってしまうとガッカリするというめんどくさい奴なんですが、甲斐谷さんの作品はいつも読みを外してくれるので最高です。騙される快感がたまらない。

      ウイナーズサークルは他の甲斐谷作品とは多少毛色が違う気もしますが、これもまたものすごく面白い。そういえば、連載雑誌のジャンプ改が10月に休刊になりますが、今後ウイナーズサークルの連載はどうなっちゃうんだろう…。

      >世間がワインに抱く蒙を啓く佐竹城も同類の主人公
      私はこの中で「ソムリエ」だけはまだ読んでいないんですよねぇ。甲斐谷さんの出世作であり、巷のワインブームを牽引したエポックメーキングな作品ですから、いずれまた読んでみたいと思います。

      >立ち姿がうそ臭いまでにスラッと決まってる
      ああ、なんかすごく腑に落ちました。確かにみんなモデルみたいに姿勢がいいですよね。これだけビシッとしているのは不自然といえば不自然ですが、私が甲斐谷さんの絵に不思議な魅力を感じているのはきっとその辺なんでしょう。乳袋には否定的なくせして、こういう嘘臭さは良しとする矛盾。

      あと、甲斐谷さんは男性作者にしては珍しく、女性キャラの下睫毛を描くところが好き。私は結構この下睫毛のありなしに煩いです。アニメ絵でも、下睫毛はあった方が絶対いいと思うんだけどなぁ…。

  2. コミックス最新巻が出て結構間が空いているのに、
    なぜこタイミングで書評??と思いつつ、
    好きな漫画なので話題に上るのは嬉しい!!

    甲斐谷忍先生の作品は『LIAR GAME』から入って、
    『霊能力者 小田霧響子の嘘』と続き、
    野球詳しくないからなぁと読むのを迷っていた
    『ONE OUTS』もドはまりしました。
    なので競馬は全くもって興味はありませんでしたが、
    甲斐谷ブランドを信じて初期からコミックスを読んでます。

    メインの題材に興味ない人をも夢中にさせる
    甲斐谷先生の構成力には舌を巻くばかりです。
    次々編み出される予想術とそれにまつわる人間ドラマのバランスが絶妙!

    ベニコさん大好きだけど、『LIAR GAME』のフクナガや、
    『霊能者 小田霧響子の嘘』の小田霧恭子にしか見えない(笑)。
    小田霧恭子はともかくとして、フクナガはニューハーフだしなぁ。
    フクナガも大好きですけど。

    ただ集英社に1つ文句を言いたい!!
    ジャンプ改のトップイラストに「ウイナーズサークル」メンバーの
    ソーイチが載ってないのが許せない!!(笑)
    ベニコさんの次に好きなキャラなのに。

    片思いのベニコさんの言動に分かりやすい程一喜一憂する姿に萌え、
    片思い相手の気持ちが自分以外の別の人に向いていても諦めないガッツに痺れ、
    気が弱そうなのに決めるところはビシっと決める漢気に惚れる!!

    • 元々漫画は最新巻を欠かさずに買うのではなく、一気にまとめ買いするタイプなのです。今このタイミングでウイナーズサークルを一気読みした理由は……話すと長いので、明日直接お会いしたときにお話しします(笑)

      >野球詳しくないからなぁと読むのを迷っていた『ONE OUTS』もドはまり
      複雑な契約の仕組みが絡むONE OUTSなんて、それこそ野球好きでないと楽しめないものと思いましたが。この面白さがわかるのであれば、きっと明日の野球観戦も大丈夫!

      >甲斐谷先生の構成力には舌を巻くばかり
      甲斐谷さんの作品は本当にどれもハズレ知らずで面白い。丁度私もアゴストさんが挙げた4作品を読んでいるのですが、個人的な好みでいえば、LIAR GAME>ウイナーズ>ONE OUTS>小田霧響子かな。

      >(ベニコ)『LIAR GAME』のフクナガや、『霊能者 小田霧響子の嘘』の小田霧恭子にしか見えない
      見た目も性格もほぼ一緒ですもんね~。恐らく甲斐谷さんはこういう女性のタイプが好きなのでしょう。私も好きです(笑) でもこの3人の中だったらやっぱりベニコが一番。

      >(ソーキチ)気が弱そうなのに決めるところはビシっと決める漢気に惚れる
      最初は一番どうでもいいキャラだったんですけど、彼がベニコに気があることが発覚してから、一躍お気に入りのキャラになりました。ベニコの気持ちがナナオにあると発覚しても、簡単に諦めようとしないところでますます好感度上昇。

      ルックスの冴えない男ながら、それでも弱気にならず必死に頑張ろうとするソーキチはすごく応援したくなる。なんとかベニコとくっついて欲しいなぁ。主人公が絡む三角関係で、主人公負けろと願うことなんてなかなかないですよ(笑)