私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!書評

オタク、中二病、非モテ、根暗、いわゆる非リア充属性を持つヒロインが最近は山のように増えてきましたね。これは自分と同じ境遇の女子であれば、ダメな自分でもありのまま受け入れてくれるだろうという男性読者の身勝手な願望が背景にあるからでしょう。黒木智子の喪女設定も、所詮読者に親近感を持たせるための“萌え要素”に過ぎないと高を括っていました。

事実、最初はそのダメ人間っぷりが愛らしく、滑稽な失敗談の数々が笑いを誘ってくれました。2巻での無表情で無口なキャラを演じるエピソードなんかは、お腹を抱えて笑わせてもらいましたよ。

ところが、彼女の描写はあまりに本物のオタク像に近すぎる…。大衆を見下して精神の安定を図るオタク特有のニヒリズム、陰湿さ、卑屈さ、無力感。それらが非常にリアルな実体に迫っていて、段々私は彼女を「実在する1人のオタク」として認識し始めてしまう。まさにフィクションからの脱皮

こうなると智子が見せる痛々しさは笑えるものでなくなり、気持ち悪さや嫌悪感の方が上回ってきます。漫画のキャラクターとしては笑える存在であっても、実在の人間となればフツーに軽蔑の対象ですからねぇ。

でも、やがて気付かされるのです。その嫌悪感の正体が同族嫌悪であることに。線を引いているつもりでいても、実際は私だって向こう側。身につまされる幾つものエピソードを受け入れていくうちに、いつしか智子が他人だとは思えなくなってしまう。そう、これはアナザーパーソンからの脱皮。遂に漫画のキャラクターが、次元の垣根を超え、自他の境界を超え、自分と同化し始めたのです!

漫画のキャラクターに感情移入すること自体は珍しくないですが、この場合はまったくの逆。私が智子に感情移入したのではなく、向こうが勝手に私の感情の中に乗り移ってきた。言わば感情侵入ですよ!! リングの貞子のごとく、漫画の世界から飛び出して私を取り殺そうとしてくるんですっ!! ひいいいぃぃぃぃぃ!!

一度智子に取り憑かれてしまったら最後、もうギャグ漫画としては見られません。だって、作中で彼女が蔑まれる姿は自分が蔑まれている姿であり、いつまでも報われない悲惨な境遇は、そっくりそのまま自分の境遇として受け止めなくてはならないのですから…。笑ったり、萌えたり、同情したり、ムカついたり、不快になったり、怖くなったり、悲しくなったり、辛くなったり、苦しくなったり、なんて精神が不安定になる漫画だ! 勘弁してくれ!

「君届」の黒沼爽子と、「私モテ」の黒木智子。スペック的には両者似たり寄ったりのキャラだというのに、圧倒的な勝ち組と負け組の格差。その世界に風早君が存在するかしないかで、こうも人の人生は左右されるものなのね…(笑) 早く「私モテ」の世界にも風早君が登場して黒木智子を救ってあげて欲しい! 彼女が、引いては私が報われる手段はもうそれしか残っていない!

私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1) (ガンガンコミックスONLINE)

著者/訳者:谷川 ニコ

出版社:スクウェア・エニックス( 2012-01-21 )

定価:

Amazon価格:¥ 514

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4757534809

ISBN-13 : 9784757534803


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