僕と君の大切な話 書評

「となりの怪物くん」の作者ろびこさんの新刊は、駅のホームを舞台にしたシチュエーションラブコメ。ピュアな高校生の恋愛を下地に、相容れない男心と女心の応酬が繰り広げられるという斬新な内容で、少女漫画という概念を超えた卓越したセンスによる会話劇が最高に面白い! 1巻を読んだだけで激賞するのもどうかと思いますが、間違いなくこれは稀代の名作です!

ネーム的な面白さもさることながら、私がこの「僕と君の大切な話」にそこまで入れ込んでしまう理由は別にありまして、それはヒロイン(主人公)相沢のぞみの尋常じゃない可愛さ。毎回同じようなこと言っているような気もしますが、いやいや、今回はマジで最強なんすよ! 少女漫画史上最強の可愛さであると私は高らかに断言したい!

「~~かしら」などの古風な女性語を使い、やや天然の入った男性慣れしていないお嬢様然とした彼女は、むしろ少年誌っぽいヒロイン像とも言えるのですが、それが少女漫画と少年誌のいいところをそれぞれ両取りしちゃっているというか、このハイブリッド感が最強のヒロインを生み出した要因なんじゃないかと。

ろびこさんの圧倒的な画力のおかげで見た目はめちゃくちゃ美人ですし、内気な性格ながら喜怒哀楽ははっきりしていて表情豊かですから、1つ1つのコマの彼女に全部見惚れてしまう有様。笑ったときの顔、喜ぶときの顔、すましたときの顔、照れたときの顔、怒ったときの顔、寒いギャグに対してゴミを見るような冷たい視線を投げかけてくるときの顔、そのどれもが超絶カワイイ!!! もし1コマでも可愛くない相沢さんがいたら指摘してください! 慎んで謝罪します!

そして、ただでさえ可愛すぎる相沢さんの魅力を更に倍加させるとんでもないチート技までありまして、それは“片想い”という魔法。同じ学校に通う東司朗君を恋い慕っている相沢さんが、彼の前で見せる1つ1つの所作があり得ないほどに可愛くて…! 顔を真っ赤にさせながら見せる純情さに確実に身悶えるはずです!!

私が少女漫画を好んでよく読むのは、突き詰めれば“恋している女の娘が見たいから”ですので、冒頭からずっと恋する乙女状態が持続するこの漫画はオールタイムニヤニヤしっぱなし。恋している女の娘が好きな方なら、確実に幸せな気分でいられることを保証しますよ! もし幸せな気分になれなかったら指摘してください! 慎んで謝罪します!

ちなみに、彼女がそこまで想いを寄せるお相手の東君はちょっと偏屈な変わり者で。経験よりも知識が先行するインテリな彼は、女性に対して相当凝り固まった偏見を持ち合わせており、いわゆる童貞をこじらせて女性不信に陥っているパターン。相沢さんの純粋な好意もあれこれ裏の意味を詮索しながら、なかなか素直に受け取ろうとしないという非常に難儀な性格なのです。

「駄目だとわかってるのにやってしまうのは、どこかでそれを肯定しているからだ。はっきり言って僕は自制的な女というのを見たことがない」
「女は自分に甘い! だから自分の感情優先でコロコロと態度が変わるんだ!」
「…始まったな。身辺調査が。男の行動を監査し、値踏みし倒し、人格までも否定する気だろう!!」
「ホーラ始まった!! 女の女による女のための断罪裁判。被告人は不在でな!!」
「女子って自分で生理前って言うクセに、こちらが指摘すると怒るよな」
「手作りなんて自己主張の激しい女のやりそうなことだ!」
「なぜ君たち女は男を試す!! これじゃ付き合ってる限り男はロープ1本で綱渡りさせられてるようなものだ!!」

女性読者が主だというのに、よくもこれだけ女性を揶揄する発言ができるなと(笑) まぁ、彼の言い分は概ね間違っていないというか、正直思いっきり首を縦に振ってしまえるものばかりですが! こうやって辛辣な女性批判をぶつけながらも、その裏にはちゃんと優しさや純粋さがありますので、キャラクターとしての魅力はまったく損なわれていません。そこはご心配なく。

それに、彼の面倒臭い屁理屈を次から次に浴びせかけられても、めげずに愛を貫き通す相沢さんの健気さがまた可愛くて~。彼女も惚れた弱みで何も言い返せないわけではなく、納得できないところはしっかり反論しますし、女子の言い分を少しでも理解してもらおうと、女心の教育を施したりもします。

「女子に何か感想を求められたら、『いいね』『似合うね』『かわいいね』と言えばいいのよ」
「女子の『かわいくない?』なんてただの挨拶よ。ユアオーケイ? みたいなものよ」

なんか実は相沢さんが一番女子をディスっている気がしないでもない…!?(笑) “女子が求めているのは意見ではなく共感”というのはすっごくわかりますね~。

「だから男は~」「だから女は~」とバチバチ口論させつつ、相沢さんは東君にべた惚れですし、東君もまんざらでなかったりするので、「結局、お前らいちゃついてるだけじゃねぇか!」とツッコミたくなるお話(笑) この2人の言い合いは永久に聞いていられますね。既に私は何度も何度も読み返しています。2巻からは学校生活編として舞台が拡大されてしまうのですが、どうかこの2人の世界観だけは壊さないでほしいと願うばかり。

僕と君の大切な話(1) (KC デザート)

著者/訳者:ろびこ

出版社:講談社( 2016-03-11 )

定価:

Amazon価格:¥ 454

コミック ( 176 ページ )

ISBN-10 : 4063658562

ISBN-13 : 9784063658569


ABOUT

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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  1. 私が少女漫画を好んでよく読むのは、突き詰めれば“恋している女の娘が見たいからですかね〜。……あれ!?被った!?

    いや〜もうろびこ先生は私のツボを刺激しすぎてヤバイですね。なんでこんな女子も男子も良いキャラで、女性観も男性観も恋愛観も共感できるのか…。となかいという最高級のラブコメを生み出しておいて、ヘタしたらそれを上回りそうなラブコメをまた世に出すとは。罪深いお方です。

    とにかく相沢さんの可愛さが半端ないですね〜。恋している女の娘の魅力が炸裂していて最高ですが、個人的に新感覚なのが「東くんに対しても怒るときは怒る」点かなと思います。
    片想い女子って、「意中の男子が何をやっても嬉しい」だったり、「彼の行動・言動について一人で家で思い悩む」ケースが多いと思いますが(それはそれで可愛いですが)、相沢さんは普通に東くんに言い返したりイラッとしたりすることもあるんですよね。
    なんというかこの、「片想いをしながらも面倒な女子」感がホントたまりませんよ…。片想いでベタ惚れだけど盲目的な訳ではなく、何気に色々求めて図々しいといいますか、「放っておいてもどうせ惚れっぱなし」な訳ではなく、「ベタ惚れだけどもちゃんと話は聞いて気は遣ってあげないといけない」感。考えてみれば当たり前ですが、この辺が凄く新鮮に感じます。
    案外東くんもウカウカして「どうせ自分に惚れてるから」みたいに考えて雑に扱っていると、相沢さんの気持ちがいつの間にか冷めてしまう可能性もあるのでは…なんて気すらしてくる難儀さが最高です。東くんのギャグに対する相沢さんのシビアな反応とかめっちゃツボりました。「なんでそんなこと言うの?」じゃなくて「なんで今言うの?」という指摘が厳しすぎる。

    東くんもかなり良いキャラしていて好きですね。確かに女性観は相当偏っていますが、浅生さんも仰る通りぶっちゃけ共感できることばかりですし、「男は達成感が好きな生き物だから差し出されたものには満足しない」という恋愛観は謎に熱くて同意です。
    偏屈ですが相沢さんの話は素直に聞きますし、これだけ女にうるさいということはある意味「女子との恋愛自体には興味がある」ことの裏返しな気もするので、男側の主人公としては文句なしですね〜。

    そもそもタイトルが「僕と君の大切な話」で東くん視点なので、片想いの相沢さんの可愛さを心底堪能しつつ、段々東くんがガチで相沢さんに惚れていく過程もエンジョイできるんでしょ!?わかってますよろびこ先生最高ですよ!!だから早く、早く2巻を…10月までなんて待てないですよ…!!

    • 適当にパラパラページをめくっても、必ず恋する女の娘が描かれているなんて夢のような一冊ですよ。相沢さん以外のキャラも魅力あるし、内容も面白いし、ろびこさんはガチの天才ですわー。

      >新感覚なのが「東くんに対しても怒るときは怒る」点
      まさにここですね! 妄想の中とはいえ、難癖つけて手作りクッキーを食べようとしない東君を、「黙って食え」とグーで殴っていたのは大笑いました。

      いくら大好きでべた惚れしているからといって、無条件に男の考えを肯定したり、無条件に男の意見に従うようなのは、逆に魅力薄だと思うんですよ。まぁ、彼色に染まる女が好きな人も多いので一概にダメとは決めつけられませんけど、少なくとも自分はただ男に依存しているだけに見えて苦手。

      いつもあれだけ楽しそうに笑顔を見せて話す相沢さんが、東君の寒いギャグに対しては急に真顔になって、人でも殺しそうな眼光で睨み付けてくるのも、彼女が単なる東君シンパでないという証左。もし男のご機嫌伺いをするだけの女なら、寒いオヤジギャグにも愛想笑いして、彼に気に入られようと必死ですよ。相沢さんはそうじゃないからこそ、普段東君に向ける愛情が嘘偽りでないという説得力に繋がっているのです。

      ラブコメの作者でも、“惚れる”と“媚びる”の区別のついていない人が多いこと多いこと。惚れると媚びるはまったくの別種であり、惚れられたいけど媚びられたくはない人間は私含めて山ほどいるはず! 少女漫画に出てくる女の娘に特別な可愛さが感じられるのは、そういった“媚び”が排除されている点だと思います。

      >片想いでベタ惚れだけど盲目的な訳ではなく、何気に色々求めて図々しい
      東君の女性観はかなり穿ったものですが、相沢さんには結構当てはまっているのがこの漫画の面白さかも(笑) そういう意味では、相沢さんはわかりやすい“女子”ですよね。

      >(東君)これだけ女にうるさいということはある意味「女子との恋愛自体には興味がある」ことの裏返し
      それこそ“あるある”ですね~。「女なんて…」と知識先行でわかったような口を叩いている人間ほど、いざ実体験するとどっぷりハマってしまうもの。相沢さんと晴れて交際をスタートしたら、思いっきり相沢さんに惑溺してしまう東君の未来が目に浮かびます(笑)

      関係ないですけど、東君の少女漫画の読み方(エピソード6)がほとんど私と一緒でした(笑)

  2. 浅生さんの書評で気になって読みました。
    …これは確かにニヤニヤが止まらないw

    >1つ1つのコマの彼女に全部見惚れてしまう
    これスッゴイ同意!
    一見すると物静かなクールタイプに見えて、実に表情豊かなんですよね。
    特に、恥ずかしがって手で顔を覆う仕草にやられましたよ。
    ハンカチいじって何してるのかと思ったら、まさかの妻設定とか、
    ささやかな図々しさも可愛い。

    漫画としても、2人のディスカッションの内容がくだらないようで
    恋愛の機微に通じていたりする所が、2人のちょっとアホっぽいノリとともに楽しい。
    東くんもクール系のようで「話しているとつい熱くなる」性格のおかげで、
    会話が転がる転がるw

    言いたいことはほとんど浅生さんとカズさんに言われているので、この辺でw

    • パウンだーさんなら絶対気に入ってもらえるものだと思っていましたよ~!

      ラブコメにおいて、好きになる過程は必ずしも必要ないんだなと思いました。告白から始まることで、初めからニヤニヤが止まらないのですから。

      >恥ずかしがって手で顔を覆う仕草にやられました
      この古典的といえる仕草がめっちゃツボなんですよねー。ぷーんとかもじもじも死ぬほどカワイイ。あざとい仕草やぶりっこは不特定多数の男子に向けると反感を憶えますが、特定の男子に向けたものならそれは肯定される。これも恋する女の娘の特権か。

      >(東君)「話しているとつい熱くなる」性格のおかげで、会話が転がる転がる
      何か過去のトラウマに触れてしまったかのように、途端に火がついてまくし立ててくるところが本当に面白い。お互いに面倒臭いところがあるから、ディスカッションが弾みますし、お似合いな2人だと感じられます。