ぽちゃまに書評

ぽっちゃり、ぷに子、マシュマロ女子、呼び名は様々ございますが、要するにお太りあそばされる女子がイケメンに惚れられるという奇想天外なお話。下手すると「デブが夢見てんなよ」で一蹴されかねない漫画ではあるんですが、「ぽちゃまに」は決してご都合主義に終わらない最強の説得力が秘められているのです。

それは、イケメン田上君のぽっちゃり好きは“性癖”であること! 「田上君はどうしてぽっちゃりが好きなの?」という問いに対し、もし「外見じゃないよ」「太ってるなんて思わないよ」「自然体な君が好きだよ」なんて薄ら寒いことを口走るイケメンだったら、私も即刻本を閉じて見限っていたでしょう。しかし、田上君の返答は「ただの性癖ですが?」という実に明快で男らしい理由でした!(笑)

なんでも中学時代に階段から転落してきたぽっちゃり女子に下敷きになって以来、その重圧感と柔らかさでぽっちゃり女子の良さに目覚めたらしい。紛うことなく変態と呼べる彼ですが、だからこそ彼が紬を愛する理由には芯が通っている! 「なんて物好きな…」と他人が眉をしかめるような悪趣味であっても、「性癖」という2文字の前では疑問を差し挟む余地はこれっぽっちもないのです!

二の腕の肉をたぷたぷしながら、余すことなく紬のワガママボディを満喫する彼は本当に幸せそう。あるとき、脚を怪我をした紬を田上君はおぶってあげようとしたのですが、彼女は「重いもん」と自らの体重を気にして恥らうのです。ですが、田上君は「ホントわかってないっすね。重いのがいいんだよ」とにべもなく言い放つ。カッコイイのか変態なのか微妙な線引きですが、ギリでイケメンが勝っていると思います(笑)

紬も太っていることを必要以上に悲観するネガティブさはなく、それでいて太っている自分に開き直れもしないのが、いいバランスですね。基本的に太っていても前向きな性格であって欲しいと思いますけど、あまりにポジティブすぎると「チョットは痩せる努力もしろよ」と一言ツッコミたくなりますから(笑)

相手の性癖すら優しく受け止められる年上としての包容力もあり、決してぽっちゃりが趣味ではない、172cmの長身モデル体型である友達キャラの方が気になる私でも、紬の可愛らしさに惹かれてしまう瞬間は何度もありました。紬がイケメン男子から惚れられることがご都合主義ではないことは、実際にご覧になっていただければ納得できると思います。

設定こそ特異であれ、ストーリー的には王道少女漫画なので、巻を重ねるごとに最初のインパクトが薄れていく弱点はあるのですが、私のようなぽっちゃり好きではない人間でもフツーに楽しめる良質な少女漫画に仕上がっています。もっとこの手の“アンバランスだけどなお似合いなカップル”の作品が読みたいなぁ。

今後、学園の美少女が何の魅力もないヘタレ主人公に惚れてくるエロゲやラノベを作るときには、「私、貴方みたいな鈍感で難聴で受け身なヘタレのくせに、何故か上から目線で偉そうに達観している鬱陶しいクズ野郎が大好きなの!!」と、ヒロイン自らが特殊な性癖を持っていることをアピールしてくれると助かります(笑) そういうゲテモノ趣味のヒロインであれば仕方がないと、2人の交際を素直に祝福できますから!

ぽちゃまに 1 (花とゆめCOMICS)

著者/訳者:平間 要

出版社:白泉社( 2012-10-19 )

定価:

Amazon価格:¥ 463

コミック ( ページ )

ISBN-10 : 4592196112

ISBN-13 : 9784592196112


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  1. お肉への感情に男女で差があるためか、2chの花ゆめスレではとにかく評判が悪い作品です。デブであることを受け入れ、女としての努力を放棄した肉塊がイケメンにモテるのはファンタジーよりもアリエナイ!というのがその大意らしいのですが、そんなもんかなーと首を傾げつつ該当スレッドには近づかずに楽しんでおります。

    花とゆめは作品傾向が最も少年誌に近い少女マンガ誌と思っているのですが、ひょっとするとぽちゃまにも少年誌で掲載したほうが評価された作品かもしれません。

    ともあれ、確かに「性癖」という伝家の宝刀の持つ説得力はすさまじいものがありますよね。
    好きなものはしょーがないというある種の開き直りは潔いと思います。ここに憐憫とか優越感とか自己犠牲とかが絡んだ恋愛話(果たしてそれは恋愛なのかという疑問も発生しますが)になるとややこしくなり読む気も失せるというものです。
    性癖、フェチというのは理屈を超越していますのでニッチ作品は枚挙に暇がありません。
    某アメリカでは進撃の巨人よりもモンスター娘のいる日常のほうが売れているという嬉しいけど信じがたいデータもありますし。

    ちなみに私はリアルでは鶏ガラよりは肉の付いてる方を選ぶというだけの積極的なぽっちゃり好きではないので、作中だと乃村ちゃんのほうが好みです。

    第二のぽちゃ子を投入したりとテコ入れをしていますが、そんなことで引き伸ばしたりせずに10巻以内ですっきりと終わって欲しいと思っています。
    ドラマCDを作るくらいだから、編集部的にはもっと続けていきたいのかな?
    (紬役の花澤香菜さんはアカメが斬る!のキチ○イ役もとても良かった)

    • 夏コミ参加のため、返事が遅れてごめんなさい。ヒンメルさんのコメントは、靖国神社の遊就館の中で拝見させてもらっていました(笑)

      ぽちゃまにって、そんなに評判良くないんですか。確かに私も何も努力していない主人公が不釣り合いな美男子(美女)にモテモテなのは拒絶反応ありますが、この作品の場合、「性癖」という最強の説得力がありますからね。デブ専のイケメンが存在することに何ら不条理はないはず。そういった男の性癖への理解度を考えると、少年誌で連載した方がウケが良かったかもという意見は頷けます。

      >憐憫とか優越感とか自己犠牲とかが絡んだ恋愛話
      それはそれでありだと思いましたよ! 例えば、主人公がすごいデブでモテない男で、そんな彼を憐憫で好きになるヒロイン、優越感から好きになるヒロイン、自己犠牲で好きになるヒロインなど、いろんな理由を用いて成立させてしまうという。愛情というのは、様々な要因から生まれるものですからね。全員元カノのエロゲに続いて、全員デブ専のエロゲも企画してみましょうか(笑)

      >引き伸ばしたりせずに10巻以内ですっきりと終わって欲しいと思っています
      ラブコメというのは、よっぽどの作品じゃない限り、10巻以上続けると苦しくなりますね。名残惜しいぐらいで終わるのが丁度いいと思います。

  2. ぽちゃまには少女漫画板では最底辺の評価ですよ。「マシュマロ女子ブームとかうぜえ」「彼氏の性癖が気持ち悪い」「痩せる努力もしないなんて」「明らかなクソデブをぽっちゃり扱いすんなよ」みたいな感想しか見かけませんし、他の連載漫画と比べても明らかに嫌われてるし10巻どころか今すぐ打切れみたいな空気です。

    自分は中学の頃ぽっちゃりAVのパケ見て一発で目覚めたので、普通のグラビア誌よりla farfaの方がよっぽどエロいと思ってますwただ高校時代のポッチャリした女友達に久しぶりに会った時痩せてしまってたのでうっかり「別に痩せなくても良かったのに」と口走ってしまったら「そういう人って本当にいるんだ・・・しかも意外なところに。そう言ってくれるのは嬉しいけど世間の人はみんな厳しいから痩せなきゃいけないのよ」と悲しげな感じの答えが返ってきてなるほどとは思いました。だから最初ぽちゃまに読んだときは「甘え」というより「女性作家でこういう漫画を描く人は珍しいな」という感想でした。

    あと自分は昔ぽちゃまに以上にぽっちゃりageしてたたかまれタカマルってファミ通の漫画読んでたのもありますね(多分こういうキャラのパイオニア?)。あれの幸地ゆきえってキャラは紬レベルのぽっちゃりさんですが周りから一回も体型のことでいじめられたりもせず、しかも元々別のメインヒロイン(スレンダーでアイドルの卵という設定)がいて主人公は最初そっちに興味があったにも関わらず、人気爆発で主人公とくっついたNARUTOのヒナタみたいな大出世を遂げた子です。まあそのキャラは性格良くて仕事もテキパキこなすので主人公含め周囲から慕われてて性癖関係なく普通に納得しましたよ。理不尽云々言いだしたらハーレム状態になってる主人公の方が謎だし。

    漫画の太った女の子キャラはドラえもんのジャイ子みたいに明確に悪意をもって可愛くなく描かれてネタor引き立て役みたいな扱いか、少女漫画だと周囲のキャラにぼろくそ言われてダイエットを始める子がほとんどだし、そもそも出てこない漫画も多いと思うのですが、ぽちゃまにやタカマルは作者が本当に太い子が好きで可愛らしく描いてるのに好感が持てるんですよね。

    個人的にはぽちゃまにはヒロインの設定以外はベタな少女漫画って感じであんまりだったなあ・・・あとタカマルは体型ネタで過剰にいじらなかったのも良かったところなんでやたらいじるぽちゃまにとかアマガミはちょっとというところも。まあタカマルはタカマルで長く続けすぎた感じがするけど・・・

    • 世の少女漫画の主人公大半がぽっちゃりになりつつあるなら、「マシュマロ女子ブームうぜえ」と反発したくなる気持ちもわかりますが、今のところ極めてイレギュラーな存在に過ぎないぽちゃまにを、そんなに目の敵にしなくても……と思いますね。1つ2つこういう漫画があってもいいじゃないと。私だって、やれやれ系主人公が1人2人というレベルならとやかく申しませんよ(笑)

      それに「ぽっちゃり好き」なんてそれほどマイノリティでも特殊でもない性癖ですから、むしろ割合的には少なすぎるといえるぐらい。個人的には、ぽっちゃり好き男子より、ケモミミ好き男子の方がよっぽど特殊な性癖だと思うんですけど!

      >「甘え」というより「女性作家でこういう漫画を描く人は珍しいな」という感想
      女性作者だからこそ、ぽちゃまには価値があると思いますね。ぽっちゃりな自分を受け入れてくれる優しい男性という綺麗事に逃げるのではなく、“ぽっちゃり好きは性癖”という現実から目を逸らさないところが素晴らしい。

      >(幸地ゆきえ)主人公は最初そっちに興味があったにも関わらず、人気爆発で主人公とくっついた
      初めて存在を知った作品でしたが、本当に正真正銘おデブなヒロインなんですねー。それが主人公の彼女にまで出世するとは、やはり潜在的なぽっちゃり好きは相当数いるってことですか。

      私は拝見したことないのですが、Majorの作者が手掛けた「BUYUDEN」というボクシング漫画で、最初は痩せていた要萌花というヒロインが途中からデブになるという設定もすごいなと思いました。そこから全然痩せることなく、それどころか身長が173cmまで伸びて新たなニッチ属性を加えるのはチャレンジ精神旺盛だなと(笑) ただでさえ関西弁キャラなのに。

      >(体型)やたらいじるぽちゃまにとかアマガミはちょっと
      それはわかりますね。ぽっちゃりに限らず、身体的特徴を過剰に弄られると逆にウンザリしてしまう。障害者のようにタブーにするのは宜しくないですが、そこしか弄れないのは芸がなさ過ぎます。

      そもそもアマガミの桜井梨穂子はぽっちゃりだと感じたことが一瞬もないので、あそこまでの弄られ方は違和感しかなかったですよ。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。