逃げるは恥だが役に立つ 書評

現在、恋ダンスが話題沸騰中の逃げるは恥だが役に立つ。ドラマだとガッキーの可愛さしか頭に残らず(ガッキーは宇宙一カワイイ)、内容がほとんど入ってこないのですが、漫画だとちゃんと話に集中できます(笑) この作品、ガッキーを抜きにしても、テーマとしてすごく面白いんですよ。

当を得ないタイトルのせいでどんな作品か想像しにくいのですが、テーマは契約結婚。家事代行サービスから端を発した平匡(ヒラマサ)とみくりの2人の関係は、やがて夫婦という体裁を取り始めるものの、正式な婚姻生活ではなく、雇用主と従業員という極めてビジネスライクな関係性の仮面夫婦となります。

身の回りの世話をしてもらう代わりにお手当を支払う男。家事の対価として給金をいただく女。愛情の介在しない金銭のみの利害関係というと、どうしてもドライで希薄な関係性に感じてしまうのですが、作中では“愛情ではなく感謝で繋がっている関係”と言葉を置き換えていて、私はそこで「ありだな」と感じるようになりました。例え金銭的な繋がりであろうとも、互いに感謝の気持ちで成り立っている関係なら、それはそれで素晴らしい関係性なんじゃないかなと。

元々、私はお見合い結婚に強いロマンを感じるぐらいなんで、こういうカタチから入る男女の関係ってかなり好き。好き同士で一緒になった相手じゃないのに、夫婦として長年寄り添っていくうちに、愛や絆が生まれていくってすごく素敵なことじゃないですか。恋人時代の余熱ではなく、パートナーとして互いを尊重しあえる関係性こそ、本当の夫婦愛って感じがしますしね~。

今、ジョジョの川尻浩作(吉良吉影)としのぶのラブロマンスに私が激しく心惹かれているのも似たような理由かな。一応あれは恋愛結婚でしたが、本気で好きになったわけじゃない男と結ばれて、でも結婚後に改めて同じ男(別人にすり替わっていますが)に本気の恋をするところがロマンチックで。

他にも、死んだ元夫の仇でありながら、仮初めの夫婦を装ううちに本気で愛してしまった巴と剣心(るろうに剣心)や、最愛の女性が他にいると見抜かれながら、自分を慕ってくれる健気さに心打たれた三鷹と九条(めぞん一刻)、共に過ごした時間は僅かばかりながら、死の間際まで妻の幸せを思いやった宮部と松乃(永遠の0)など、恋愛結婚じゃない夫婦愛というのはどれも私の中で想い出深い。古い作品ばかりで恐縮ですが(笑)

話が少し脱線しました。逃げ恥の平匡とみくりの2人も、始まりこそ雇用関係にすぎない契約結婚ですが、夫婦として共同生活を続けていくうちにお互いを異性として意識し始めるようになります。ビジネスという建前があるため、なかなか一歩が踏み出せないもどかしい男女のラブコメ展開はニヤニヤ必至。2人ともいい年した大人なのに、ハグすら躊躇する中学生レベルの初々しさがたまらなくカワイイんです!!

特に平匡は、恋人いない歴36年のスーパー草食系高齢こじらせ童貞なので、本当に面倒臭い性格で(笑) 奥手を悟らせないためのクールを気取り、自尊感情が低いくせにプライドだけは高い。傷付く前に相手を切り捨てる防衛本能。一度調子に乗るとテンションが変と、まさに「童貞特有の○○」が揃っていてあるある的共感ポイントが高い!

みくりと両想いであることが判明したら、面倒臭い童貞から青臭い童貞へとクラスチェンジを遂げて更にキャラ崩壊。まんま初恋を経験した中学生ですからね~。キスを交わして胸一杯の幸せを堪能していたのも束の間、もしかして彼女は満足してないんじゃと急に不安が襲ってくると、Googleで「キス 物足りない」と検索していたのは笑いました。結婚というゴール地点から、初恋のようなプラトニックな恋愛をスタートさせているのが実に微笑ましい。夫婦間恋愛って最高だ!

ただ、この作品はコメディテイストな恋愛劇だけじゃなく、意外と社会派な一面もありまして。仕事や結婚といったデッドロックに陥りつつある現代社会の問題に対し、既存の常識にとらわれないテーゼを示してくれるので、真面目に考えさせられる場面が幾つもあります。愛とは無償なのか、有償ではダメなのか。ふとした雑談シーンの中でも重たい問題提起があったり。

ドラマだとガッキーの可愛さで誤魔化されがちですが、妻みくりは決して万人から好かれるキャラではないです。家事に対価(金銭)を要求する妻というのは、サービスを無償と考える日本において受け入れられにくい概念なのは確か。夫を甲斐甲斐しく世話するのを妻と務めとして無償の奉仕を求めるのは、社員に愛社精神を押し付けて正当な報酬を支払わないブラック企業のやり口と同じだとも語っていましたが、これにも賛否両論はあるでしょうね。

私は通常の婚姻関係を否定する気はありませんけど、夫婦の形態の多様性を考える上で、男女ともにニーズがあるであろう契約結婚というカタチは、もっと一般化されてもいいような気がします。この先、ドラマがどこまで原作通りに進むのかはわかりませんが、果たしてみくりのこういった主張は視聴者に受け入れられていくのか、ガッキーの可愛さでフォローしきれるのか、個人的にはそこも注目ポイントだったり。

逃げるは恥だが役に立つ(1) (Kissコミックス)

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カテゴリ:Kindle版

発売日:2013-12-06


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