町田くんの世界書評

顔も頭も大して良くないのに、優しさだけが取り柄で美少女からモテモテだとぉ!? そんなの私が忌み嫌うラノベ・エロゲ主人公と同類じゃないですか! 許さぬっ!! そんな都合の良い話、この私が断じて許さぬっ!!

と、思いっきり否定的な視点で町田君を観察していましたが、少し読み進めただけで「いやぁ、こいつはモテるわ!」とすぐさま方向転換。ラノベやエロゲの主人公はリアルに存在していたら、まず間違いなく彼女どころか友達もできませんけど(いや、できる人もいるでしょうが)、町田くんは現実に存在しても確実に人から好かれると確信できるだけの魅力がありましたね~。

では、スペック的にほとんど変わらない両者に、どうしてこれほど印象の差が生まれてしまうのか。それは「優しさ」の種類の違い。

ラノベやエロゲの主人公たちだって、基本的にはみんな優しくていい人なんですよ。ヒロインに「困っている」「助けて」と頼られたら、万難を排してヒロインの問題を解決してあげることでしょう。そういう男らしさは持ち合わせている。そして、ヒロインは自分のために頑張ってくれた主人公に感謝して、惚れるというのが王道パターン。男向けラブコメの基本にあるのは、この「見返り型」ですね。

見返り型の利点は、女性から頼られることで男としての自尊心が擽られ、女性の力になってあげることで男としての有能性を示せて、最後はその女性とくっつくことで男としての満足感を得られるという、徹頭徹尾男にとって都合がいい点。だから、このフォーマットがいつまでも愛され支持されているわけですが、現実は往々にしてその見返りがないのが辛いところ…。「女性は助けてあげると、自分のことを好きになってくれる」という独り善がりな誤解で成り立った机上の空論であることが、この見返り型の最大の弱点だといえましょうか。

話が少し逸れましたが、町田君が持つ優しさというのは、察してあげられる力。つまり、彼の場合、頼られてから助けようとするのではなく、困っていそうな人に自分から手を差し伸べることができるんですね。「助ける」という行き着く結果はまったく同じであっても、お願いされた上で助けるのか、お願いされる前に助けるのかで、相手の印象に天と地の差があるのは間違いありません。町田君の優しさとは、受動的な優しさではなく、能動的な優しさなんです。

受動的な優しさは、感謝はされても愛されるのは難しい。よくいう「いい人止まり」の人間だって、結局自分からは何もしようとしない“使われる奴”にすぎませんから。町田君は、決して他人の心が手に取るように読める万能な人間ではありませんが、少なくとも他人の気持ちを斟酌して、理解しようとしてくれる。町田君は心憎いほどの「気配り」ができる男子だからこそ、スペックが低くても女子からモテるという説得力に繋がっています。「察してあげる」ことが如何に重要で高等な恋愛テクニックであるかということですねぇ。

その気配りも度が過ぎると逆に嫌味を感じるものですが、そこは「人が好き」という設定が上手く中和できていると思います。計算や下心に衝き動かされたものではなく、「人が好き」という純粋な気持ちが根底にあるから、嫌味に感じにくい。なんだかんだで「人が好き」な人はやっぱり人から好かれますよ。人が好きじゃない私は、人から好かれませんし。

町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)

著者/訳者:安藤 ゆき

出版社:集英社( 2015-07-24 )

定価:¥ 432

Amazon価格:¥ 432

コミック ( 165 ページ )

ISBN-10 : 4088454219

ISBN-13 : 9784088454214


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