かぐや様は告らせたい 書評

別に私は漫画家でもなんでもないですが、かぐや様は告らせたいの第1話を読んで、「この手があったか…!!」と作者に激しく嫉妬を憶えました。生徒会会長の白銀御行(しろがねみゆき)と、副会長の四宮かぐや、互いに相手を懸想していながら、“恋愛は先に惚れてしまった方が敗者”という強迫観念から、プライドの高い2人は自分から告白を切り出せない。ゆえに、怜悧な頭脳をフル回転させ、相手から「好き」という言質を引き出そうと画策する。普遍的な恋愛の駆け引きを、勝敗を競う頭脳ゲームにまで昇華させたのはまさに発想の勝利

ラブコメでありながら、デスゲームが如き緊迫感が漂っているところが本当に面白くて。常々主張していますように、私は男女の恋愛における主導権争いがなによりも大好物ですので、相手の出方を牽制しながら、二手三手先を読んで追い込んでいく詰め将棋のような恋愛の駆け引き(いちゃいちゃともいう)が、もう楽しくて楽しくてしょうがないんですね~。

一緒に映画を観に行きたいと思っても、自分から誘っては相手に好意を悟られてしまうため、映画館でばったり偶然出逢うことを装ったり、いちいちその回りくどさが笑えます。山と海、どっちに旅行に出かけるかという議論になったときは、天文の知識が豊富な白銀は山を提案し、水着姿で悩殺したいかぐやは海を提案。意見が変更線のまま対立する中、白銀は自分が虫が苦手だったことにふと気付き、海に軌道修正。同時に、かぐやは成長過程の胸(つるぺた)では効果が薄いことに気付き、山に軌道修正。この絶妙な擦れ違いを続ける2人が最高~!!

ヒロインから告白されるまで徹底して鈍感を装うクズ野郎が私は親の仇ほど大嫌いで、エロゲでそういうヘタレを見せられるたびに大量のシナプスがブチ切れていたんですが、白銀御行がその手のゴミ主人公と似ているようで非なのは、彼はちゃんと内心でかぐやのことを意識しまくっていること。口にはせずとも態度で好きなのはバレバレですから、そこに“素直になれない系男子”としての微笑ましさがあるんですよね。本当に「お可愛い人」です。

成績優秀で常に学年トップを維持する天才でも、実は毎日10時間の勉強、テスト前は不眠不休で必死に猛勉強に励む努力の人だったり、彼には好感しか持てませんよ~。勉強以外はからっきしで、なぞなぞが苦手、虫が嫌い、カナヅチ、運動神経なし、音痴、魚が触れなない、モンスター童貞と、実は結構低スペックなのも親近感(笑) それら数多い弱点も、人知れない影の猛特訓で、次々克服していくところが本物のイケメンなんですが!

そんな主人公、白銀御行の魅力が爆発したのが第5巻収録の「花火の音は聞こえない」。これは控えめに申し上げても、ラブコメ史に残る超名作エピソードでした!! 花火大会で花火を見たことがないかぐやのために、持ち前の頭脳を駆使しながら奔走し続ける白銀の格好良さ。フォロワー数ゼロのかぐやのTwitterに書き込まれたSOSを察知して以降の大立ち回りは、総毛立つほどに感動させられます!

「だったら俺が見せてやる」
「……ふん、『四宮の考えを読んで、四宮を探せゲーム』の事か? いつものに比べれば100倍簡単だったよ」
「知らん! だが挑戦する価値はある! 四宮に花火を見せるんだよ!!」

白銀のセリフは、どれも魂が震える~~!! 事実、かぐやは完全にハートを射貫かれてメロメロになっていたのですが、白銀本人はテンションがハイになりすぎて痛いセリフを吐いてしまったと、後日めちゃくちゃ後悔して恥ずかしがっていたのがまたカワイイ(笑)

「花火の音は聞こえない」というタイトルは、深窓の令嬢であるかぐやはいつも家の窓から遠くの花火を眺めていたという意味と、大好きな彼と一緒に見た初めての花火は、胸の高鳴りのせいで音が聞こえなかったというダブルミーニングになっていたのが素晴らしい!! くそぉっ! なんてオシャレなラブコメ描きやがる!!

「かぐや様は告らせたい」はあくまでギャグメインのコメディ作品であり、ラブストーリーに関しては正直オマケ程度と思っていましたが、実はラブストーリーとしても一級品だったのが嬉しい誤算。普段ギャグをやっている漫画が突然シリアスを始めると読者受けよくなかったりするんですけど、この作品はその緩急の付け方がとてもお上手。シリアスなラブストーリーで胸キュンとさせたところを、しっかりまたギャグで落としたり、真の意味でのラブコメだと言えるかもしれませんね~。

ちなみに、当初こそ高度な頭脳戦でバチバチ戦っていた2人ですが、次第にその頭脳戦の趣は薄れてきています。この点に関してだけは少々残念だと言えるのですが、“人は恋をするとアホになってしまう”ので、これはもうしょうがないかなと。

かぐやが「会長は私だけに誕生日を祝ってもらいたがっていた」という既成事実を作り上げるトラップを仕掛け、まんまとその罠に引っかかった白銀に王手をかけておきながら、自分がプレゼントした扇子を白銀に使ってもらえていた嬉しさが上回って思考がまとまらなくなり、結局有耶無耶になっちゃったところなんて、もう完全に「天才たちの恋愛頭脳戦」ではなくなってますもんね(笑) ベタ惚れすぎてアホになっていくかぐやちゃんが可愛くてたまらない!

かぐや様は告らせたい 1 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス)

著者/訳者:赤坂 アカ

出版社:集英社( 2016-03-18 )

定価:

Amazon価格:¥ 555

コミック ( 198 ページ )

ISBN-10 : 408890432X

ISBN-13 : 9784088904320


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  1. かぐや様は告らせたいおもしろいですよね。近い将来かならずアニメ化すると思います。

    僕的にはかぐやよりも、藤原書記がかなり推せるんですけど。白銀×かぐやの駆け引きバトルだけだとぎすぎすしがちな所、藤原書記が上手に緩和剤になってて、作品をよりよくしてる存在と思います。

    天然バカキャラだけど、言いたいことは結構はっきり言ったり、悪意のない行動がかぐやを地味に怒らせてる所もかなりいいですね。

    • 水面下で白銀とかぐやが激しい主導権争いを繰り広げていることにまったく気付かず、マイペースっぷりを発揮している生徒会書記の藤原千花はいい味出しています。ド天然の彼女が空気を読まず介入してくることで、緻密に積み上げてきた両者のロジックが瓦解、あっという間に戦局が一変しますから。こういったイレギュラーな不確定要素は、頭脳戦に深みを出してくれますね。

      勿論、個人としてのキャラも好き。「え? IQ? 3です!」のセリフがツボすぎる(笑)

  2. 本レビューを読んでネットで一部立ち読みして、で、その日のうちに全巻大人買いしてしまいました。
    いやほんと、レビューに偽りなし。これは傑作ですわ。
    この作品の魅力はシナリオは以上にキャラクターの魅力。
    四宮さんを始めとするヒロイン陣は勿論のこと、何より白銀会長の魅力が突き抜けてます。
    ええかっこしいのトキメキストであり勘違い大馬鹿野郎であり、そして仁義に厚く努力家であり熱血漢である。
    特に麻生さんイチ押しの5巻の花火シーンでは、本当に彼の魅力が大爆発したと感じました。
    できれば今度はこれに匹敵する、四宮さんのかっこかわいいシーンが見たいと思いますが、まぁこれは今後に期待ですね。
    良い作品を教えてくれてありがとうございました。

    • 既に有名作品ですので、「私が紹介した!」と手柄ぶるのは恥ずかしいですが、レビューきっかけで気に入ってもらえたのは大変嬉しいです。ラブコメというジャンルが特に好きでなくても楽しめる作品だと思いますし、万人受けしやすい名作かと。今、最もアニメ化が楽しみな作品と言えるでしょうか。もうそろそろ発表があっても良い頃合いなんですけどね~。

      >ヒロイン陣は勿論のこと、何より白銀会長の魅力が突き抜けてます
      主人公(男)がカッコイイのは、ラブコメにおける必須条件ですね。カワイイヒロインに釣り合うのはカッコイイ主人公なのは当たり前。お似合いのカップルだと読者が認められるからこそ、「いいからお前らさっさと付き合えよ!」とニコニコ顔でツッコミを入れられるのです。

      今、ラブコメでは「かぐや様は告らせたい」と「僕と君の大切な話」が頭1つ抜けていますが(私の中で)、どちらも1対1の男女のやりとりにフォーカスを当てて、最初から好意を持っているという点で共通しています。こういったスタイルが今後のラブコメの流行にもなるかも?

      >四宮さんのかっこかわいいシーンが見たい
      会長にベタ惚れ状態のかぐやは常時カワイイですけどね~。白銀がネコミミつけたときの「おかわわわわわわわわわ!!」が好き。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。