ガーリッシュナンバー書評

一躍花形職業に躍り出た声優の人気上昇に伴い、声優業界を舞台にした作品が目立ち始めました。今秋アニメ化が予定されているガーリッシュナンバーもその1つ。競争の激しい声優業界の中、新人声優が奮闘する姿が描かれるのは従来作品と変わらないものの、少し毛色が異なるのは、主人公にやる気がないってところでしょうか。

来る日も来る日もモブの仕事ばかりなことにすっかり嫌気が差してしまった主人公の烏丸千歳(ギャラクシーエンジェルにいましたよね?)は、声優でありながらアニメの収録を地獄タイムと呼び、「早く終わらないかなー」と適当に時間が過ぎるのを待っている体たらく。

業界を斜めに見ながら毒突く彼女の思考は適度にクズで、女性声優のサイクルの早さ、アイドル声優への傾倒など、昨今の声優業界に対する批判的な意見もちらほら。「この業界頭おかしいと思う」と真顔で明言してしまう主人公の作品がアニメ化されるというのもなんだか不思議な感覚ですよ。

まだ駆け出しの新人なのに、早くも仕事への意欲が阻喪している彼女は情けないといえば情けないんですが、私は等身大の主人公として好感が持てました。何も彼女も最初からすれからしであったわけではなく、夢を持って声優を目指していた上で、今はその夢見がちモードから醒めてしまっただけ。最初はビギナーズハイでやる気に満ち溢れていても、往々にしてその夢見がちモードは新人という身分が終わる前に終了してしまうもの。職種に関係なく身に覚えがある人は多いでしょうから、同じように千歳に共感を持てる人は多いはず。

SHIROBAKOのずかちゃんのように、健気に夢を追い続ける姿を応援したくなるのは当然ですが、千歳のように、新人ならではの壁にぶつかってやさぐれている姿を見せられても、ここで腐らず乗り越えてほしいとついつい応援したくなるんですよねー。

彼女はやる気に欠けているとはいえ、愚痴愚痴と陰にこもる性格ではなく、基本明るい性格であることも幸いしています。暗いクズは遠慮したいですけど、明るいクズは愛せる(笑) 希望はなくとも悲観はしませんし、この思い詰めすぎない性格は声優向きですよ、きっと。

千歳には、同じ業界でマネージャーとして働いている兄がいますが、この兄妹関係がまたリアルでいい。基本兄を舐めきっていて、兄を便利な存在として利用するぐらいの感覚でしか見ていませんけど、そこが「お兄ちゃん大好き!」というファンタジー妹とは違うリアル妹の可愛さ。この良さが全国の諸兄にも伝わってくれれば~(笑)

原作がラノベなのでやや色眼鏡で見る部分はありつつ、意外や意外しっかりしたリアリティがあって、キャラもお話も私好みで面白かったですね。今から秋のアニメ化がとても待ち遠しい!

ただ、今の時代主人公(特に女主人公)は聖人君子の如き良い子ちゃんじゃないと否定されますし、未熟な人間性を露呈してもボロカスに叩かれてしまう。モンスター視聴者の厳しい視線が注がれる中、彼女のキャラはちゃんと世間に受け入れられるのか、そこだけが心配。

ガーリッシュ ナンバー (1) (電撃コミックスNEXT)

著者/訳者:堂本裕貴

出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス( 2016-07-26 )

定価:¥ 616

Amazon価格:¥ 616

コミック ( 164 ページ )

ISBN-10 : 4048922424

ISBN-13 : 9784048922425


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