うちの妹のばあい 純愛版
メーカー〔イージーオー〕 発売日2007年10月26日


純愛って……何かね?
うちの妹のばあいとは、神の如き「最高のラブラブ和姦」と、魔の如き「最悪の寝取られ陵辱」を併せ持つ半神半魔のエロゲ。ところが、この「純愛版」では、なんとその半身たる魔を追い払ったという! 寝取られ陵辱が根絶されたうちの妹のばあいなんて、まさしく神そのものじゃないですか! 私の願いを叶えてくれる神様ですよ! これでもう余計なことに神経を磨り減らすことなく、優香と心行くまでのラブラブ和姦が楽しめるんですね! ああ、なんて幸せ~♪ 捨てられた片方は、多分、今頃大魔王にでもなって世界征服を企んでいると思われますが、そっちは電子ジャーにでも入れて封じ込めておいてください


と、勝手に甘い夢想に耽って無邪気に喜ぶ私でも、内心では、冷静に疑惑の目を向けている…。イージーオーさんは、甘い文句で煽りながら、それを嘲笑うかのように騙し討ちするドSメーカーだけに、純愛版と銘打っていても、本当に100%純愛に徹しきれているのか怪しいところ。前作幼なじみな彼女も、節々で寝取られ・陵辱に対する未練がタラタラでしたので、言葉通りを鵜呑みには出来ません。

その心配は案の定と言わんばかりに、序盤から疑わしい空気。怪我した傷を気遣う先生に対して「何、触ってんだ。このアマ!」の選択肢がそのまま残っていたりして、先行きの不安を感じさせます。純愛版になってある程度シナリオが刷新されるものだと私は思い込んでいましたが、実物はほとんどそのまんま。目に見える違いは、立ち絵が変わったことと、新キャラが増えたことぐらいで、物語自体に大きな加筆修正はありませんでした。即ち、妹優香への心労で胃がキリキリ痛み出す、あの地獄の苦しみを再び味わわないといけないわけで…。

「そんな大袈裟な」「前に一度体験してるなら平気だろ?」と軽く思われるかも知れませんけど、私の繊細、且つナイーブなハートを舐めてもらっては困ります。例え二度目であろうと、友人和樹とイチャイチャじゃれ合う優香や、最低男虎牙の言いなりになっている優香の姿を、鷹揚に見ていられるわけがないっ! 嫉妬と憎悪がドロドロと渦巻き、今にも胸が張り裂けんばかりですよ!!

確かに純愛版では忌々しい寝取られは削除されています。しかし、それは一発レッドの直接的な寝取られシーンがなくなっただけで、イエローカードに値する準寝取られシーンは山ほどあるんですね。

例えば、セバスチャン(菜々子の執事)になりきって優香を犯すという疑似寝取られセックス「淫乱女にはお似合いの格好だな。お前の兄も、こんな姿を見たら失望するに違いない」と主人公達也が口調を真似始め、律儀に優香もそれに合わせて演技。やがて、「セバスチャン様、優香にっ……優香にあなたのたくましいペニスをお与えくださいっ」「お兄ちゃんの時と比べモノにならないっ。わたし、セバスチャンから離れられないよぉ!」と喚く始末。無印版でも超胸糞悪いシーンでしたが、まさか純愛版にも丸々残っているとはねぇ~(怒)。

新キャラ小柳美穂もひどい。長年に渡って優香に対し執拗なイジメを繰り返し、彼女から兄を寝取ってやろうとする悪女で、立場を置き換えただけの女虎牙猛に過ぎません。籠絡された達也は彼女と身体の関係を持ってしまうわけですが、美穂は寝取っている最中を優香に電話で聞かせるんですよ。これは気分悪いですね~。美穂にもムカつきますし、そんな女に現を抜かす達也にもムカつく(まぁ、私の選択でそうさせているわけですが…)。

度し難いのは、保健室で1人眠る優香を、「二度と人前に出ようと思わなくなるぐらい徹底的に犯せ」と虎牙猛に嗾(けしか)けたこと。何とか事なきを得ていたとはいえ、その行為を示唆して連想させる極悪な展開にはキレそうになりました。これは故意に審判を欺く行為(シミュレーション)としてレッドカード出してやりたいよ!

もはや「純愛版」の看板など完全に形骸。寝取られと陵辱に対する未練がましさ満載で、とてもじゃないけど安堵して楽しめるようなエロゲじゃありません。そんなに寝取られ陵辱がやりたきゃ、無理せず「うちの妹のばあい 陵辱版」を作って思う存分やればいいのにね。買わないであげるから。「陵辱だよ!」と宣伝しつつ、この内容ならまだ許せますが、「純愛だよ!」と宣伝しつつ、この内容はキツイ。純愛版とは、何のため、誰がためのリメイクだというのでしょうか?

別に、サブ風情がヒロインに触れるなとか、ヒロインは須く主人公に一途じゃなきゃダメとか、さすがの私もそこまでは思っていないんですよ。視野が狭すぎるのは逆に不健全ですし、ヒロインが自由に恋愛をすることは望ましいこと。だから、優香と和樹がくっつくこと自体は、批判するつもりありません。目の前で甘える姿を見せつけられるのも、惚気話を聞かされるのも、まぁ、許せますよ…。キスしている現場を目撃してしまったり、和樹のために嬉々としてコンドームの付け方を練習しているのも……ゆ、ゆ、許します(唇から血をダラダラ流しながら)。

こういった葛藤を引っくるめて「うちの妹のばあい」ですし、物語を構成する上でそれは不可欠な要素。恋愛をすれば少なからず傷を負うものであり、無傷な恋愛の方が欺瞞的。だから、辛くてもこれは受け入れられるんです。嫉妬に狂うことも含めて恋愛だと。それに、胸突き八丁を越えてこそ、最後に辿り着く真説ルートのご褒美がより甘美になるってもんですから!


真説(純愛版)ルートでは、紆余曲折あって素直になった優香と心行くまでのラブラブ和姦「やだ、どうしよ……おちんちんクチュクチュするの楽しい♪」とセックスの楽しさにも完全に目覚めた状態で、甘える妹、意地悪な妹の緩急を付けながら、貪欲に兄の身体を求めてくるように。妖艶さを湛えた優香に圧倒される達也も、負けじと優香をメロメロにすべく奮起して、彼女をよがらせて自分色に染めるべく腐心する。この主導権を握り合おうとする関係が堪らないのよね~。

行為そのものには派手さもアブノーマルさもなく、特別シチュエーションに富んでいるわけでもなく、フェラ・正常位・後背位・騎乗位を繰り返すだけの至極単純なものですが、弛まなく注がれる愛情、快楽に溺れていく過程、そんな部分が実に上手く描かれているため、他のエロゲでは味わえないような圧倒的な精神的充足を得られるのです。

……でも、オマケの外伝モードに収録されている岩崎達也猥伝でそんな浮かれ気分も台無し。ここでは「世界一のお兄ちゃん」であった岩崎達也が最低の兄貴に成り下がるという話で、数々の女性に手を出して孕ませて行きながら、最後に妹の優香をムリヤリ陵辱するというもの。あのぉ…つかぬ事をお伺いしますが、これって純愛版ですよね? なんでそんなことするんですか?

その後はヒロイン全員とのハーレムエッチが待っているものの、あんなことがあった後にご都合的ハーレムエッチが始まったところでちーっとも嬉しくない。ホント、ふざけないで欲しいですよ。


うちの妹のばあい純愛版は素晴らしい一面があったとしても、ことごとくマイナス面で相殺されてしまうのがね…。美しいCGに生まれ変わったのに、肝心なところが旧CGのままで相殺。新キャラさゆりさんは最高だったのに、小柳美穂が不愉快で相殺。虎牙猛がせっかく改悛したのに、代わりに達也が外道に成り下がって相殺。まさにうちの妹のばあい純愛版は、神と魔が同居した半神半魔のエロゲですよ。……って、なんのための純愛版なのやら。魔を追い払ってくれたんじゃなかったっけ? 神様とピッコロが再び融合する日が来るにしても、もっとピッコロさんが改心してからにしてください。いくらなんでも元に戻るのが拙速すぎます!

最後、あの真説ルートで綺麗に終わってさえいれば、「なんだかんだでいいエロゲでした!」と満面の笑顔でレビューを締められたのに、最後の最後に「暗黒お兄ちゃん」を見てしまって、そんな気分も吹き飛んでしまいました。でもまぁ、最後の最後の最後で「優香(ナース)におまかせ」のエッチシーンに癒されましたから、なんだかんだでいいエロゲだったかな…。

純愛キャラに生まれ変わったと評判の虎牙猛は、今回の純愛版の見所の1つ。でも正直、私は二度と顔も見たくないキャラですし、彼の犯した罪の大きさを考えると、今更「実はいい人でした」「こういう事情がありました」なんて言い繕っても許せるはずがない。仮に爆発寸前の核爆弾をセスナ機に積み、ネバダの砂漠で爆発させて自ら一人が犠牲になろうと、私は虎牙猛を許す気は毛頭ありませんでしたよ。

しかし、外伝での虎牙猛の本性を知ってしまうとさすがにぐらつく。勿論、「許せる」ことはないんですが、多少は同情しましたし、最初からこんなキャラだったら良かったのになぐらいには思いました。達也と和樹と猛の3人が純粋に野球に汗を流すストーリーを見たかったと。スポーツを題材にしたエロゲって見たことないですし。

お気に入り? 後にも先にも岩崎優香しかあり得ませんよ。優香以外のヒロインを攻略しても、優香のことが終始気になって仕方ないですし、優香を差し置いて幸せな気分には浸れないんですから。

優香以外でというなら、かれんちゃんがランクAに認定した保健医の春日さゆりさん。穏やかな語り口調が魅力の癒し系おねーさんですが、ぞくりとする色気も併せ持っているのが魅力。この表面に表れないエロスは、彼女独特のウィスパーボイスのせいかも。CVは森川陽子さんか。憶えておこう。

うちの妹のばあいをやると、エッチシーンのBGMって重要なんだなって思います。なんていうか、エッチシーンで暗澹としたBGMを流されると、それだけで「陵辱している」気分が強まる。逆に穏やかなBGMだと、陵辱気味なシーンでもそれほど苛立ちはしないんですよ。不思議ですね。

つまり、私が言いたいのは、「和姦なのに陵辱っぽいBGMを流すな!」ということです。ただでさえ、私はSickness恐怖症。この音楽が流れると一瞬で陰鬱な気分になれる自信があります。パブロフの犬の如く。
2007年10月29日