発売日 2010年12月17日
メーカー Atelier KAGUYA 
おい痴漢! いいかげんにしろよ! おいチカン!!
物語の主人公・鷹取迅(たかとり じん)は凄腕の痴漢として名を知られていた。日常生活の中では己の欲望を満たすことが出来ない迅は、自分と同じ “逸脱者” の素質を持った女を求めて痴漢行為を繰り返す。だが、とあるミスからレイヴンの手に落ち、痴漢に関する能力を全て奪われてしまう。

なんですか、「痴漢に関する能力」って(笑) 相変わらず、エロゲでは痴漢がやたらと格好良く描かれますよね~。たかが痴漢のくせに、まるで使命感を帯びたヒーロー気取り。レイヴンってのもなんだか悪の組織っぽいですけど、実体は痴漢を取り締まる真っ当な警備組織ですし、平たく言い直せば、世間から爪弾きにされている落伍者が、ストレス発散のために痴漢しまくっていたら、バレて捕まったというだけの話じゃないですか。それをこれだけご大層に、自分の都合良いよう脚色するんだもんなぁ~。


しかし、最終痴漢電車3のこの中二病設定は明らかに自覚的。エロゲに登場する痴漢の無意味な格好良さを逆手に取って、敢えて突き抜けた設定になっているんですよ。鷹取迅の、いや、迅さんの痴漢の美学に生きるストイックさは半端じゃなく、眼差しの高いプロ意識に私も感心しきり。痴漢している最中、「お前じゃない。俺が欲しいのは」といきなり失礼極まりないことを宣ったりしますからね。

「な……なに、どういう……意味よ?」
「すまなかったな。見込み違いだった。他を当たる」
「……まだ、こんなこと続ける気?」
「ああ。そうするしかないんだ。──俺のような“異端”はな」

迅さんが仰るには、痴漢する相手は誰でも良いわけじゃないらしく、真っ当な社会では癒せない欲望を共に分かち合い、高みへ望める女性を探しているとのこと。自分と同じ異端の匂いをまとう女性を。

意味がよくわかんないけど、なんかカッコイイ!! 迅さんが見せるこの男の哀愁に女性たちがメロメロになってしまうのも納得ですよ。「演技だの、表現力だの言う以前に、ありのままのお前を見せるべきだ」痴漢が終わって満足したら、偉そうに説教を始める迅さんも男らしくてカッコイイです! 痴漢後、去り際に残していくセリフが毎回楽しくて仕方ありません。


痴漢パートは、ちょっぴりゲーム感覚。制限ターン内に多彩な愛撫を駆使して相手を絶頂へ導くのが目的で、相手の感じるポイントを優しく責めるか、嫌がるところを敢えて執拗に責めるか、ターゲットの嗜好に合わせて戦略を練る必要があります。車上のチェスと呼ばれる知的な大人のスポーツ、それが痴漢

ここで特筆すべきなのは何と言っても「必殺技」でしょう。迅さんの秘めたる力が解き放たれときに炸裂するその必殺技の凄まじさと来たら!!

──俺の中の悪魔が覚醒する。底知れぬ欲望に衝き動かされた両手が獲物を求めて蠢く。「──そうか、お前たちも飢えているか。いいだろう、食事の時間だ」 俺の取り戻した、悪魔の手──『デモンズハンド』が○○を襲った。

これでやっていることが痴漢というギャップが最高! 無駄に力の入ったスタイリッシュな演出に爆笑を堪えきれませんよ~! 好機に乗じて一気にマインドバーストで勝負を決めるべきか? それとも、ギルティプリズンで手数を増やし手堅くライトニングチャージをかけるべきか…? こんなことを考えながら痴漢しないといけないので、もう完全にギャグの世界ですね(笑)


おかげで今回の3はかなりバカゲー寄りで、陵辱色が弱かったと言えます。独占ルートを選ばなければ、ヒロインは最終痴漢電車の生け贄に堕とされる過酷な運命ですが、そのときは既にノリノリのウェルカム状態になっているので、悲惨さはゼロ。多数の男性相手に楽しくハッスルなさっています。2では痴漢されている最中、みんな目に涙を浮かべていたものですが、今回は誰一人泣いていませんでした。逞しくなったね!

個人的にとても嬉しかったのがラブラブ痴漢まであったこと! わーい! アパートの隣人薫子は、迅さんをジンジンと呼ぶ親しい仲であるだけあって、痴漢プレイに対しても超乗り気。これは群衆の中でイチャつくバカップルに近いものがありましたよ~! 前回レビューで「次はラブラブ痴漢モノを是非お願いしたい」と書き記したものですが、その願望が慎ましやかながら叶えられたカタチ。7年越しでね。

痴漢モノは構造上、どうしてもヒロインの魅力が伝わりきらないのが難点。その上で主人公のキャラが素敵すぎたので、印象に残ったのは迅さん1人しかいなかったです(ボイスが欲しかったなぁ)。

「こんなの初めて……あなたは一体……?」
「ただの痴漢だ」

カッコイイ!!
2010年12月20日