発売日 2006年7月21日
メーカー May-Be SOFT 
ご主人様は甲斐性なし
彗星の如く現れた新星シナリオライター箒星さん。前作モノごころ、モノむすめ。では軽妙なテキストに巧みなキャラメイキングと、その実力の高さを見せてくれました。これまで優秀な原画家を擁しながら、常にダメシナリオが足を引っ張ってきたMay-Be SOFTにおいて、“まともなシナリオライター”の誕生は願ってもないこと。その箒星さんが引き続きシナリオを手掛けた新作とあれば、否が応でも期待は高まってくるというものです。


でもなぁ……。「メイドさんと大きな剣」ってのはさすがになぁ……。

無骨な大剣と可愛いメイドさんのミスマッチさが萌えるとの煽り文句ですけど、本当にこんなの萌えます~? どうにも私には同意しかねるところ。まぁ、かつてはドリルを装着したメイドさんが出てくるアヴァンギャルドなエロゲもあったぐらいですから、こういうのが好きな層は確実にいるんでしょうけど…。

実はこの作品、「メイド+大剣」というコンセプトに留まらず、ありとあらゆる部分に理解不能のセンスが散りばめられていまして、正直私にはついて行けないことだらけだったんですよね。

例えば、作中に出てくるメイドは、根っからのメイドさんじゃなく、学校に通う生徒や先生が兼業でメイドをやっているだけだったり。つまり、昼間はクラスメイトや担任である人たちが、放課後になると突然主人公のメイドとなり、ご主人様、旦那様と傅(かしず)いてくるわけですよ。いくらなんでもこれは設定に無理ありすぎでしょう。

そして、主人公も主人公で「ご主人様」としての資質はゼロ。平凡で何処にでもいる学生身分の彼が、“実は大富豪の息子でした”という棚ぼた展開で、いきなり豪邸とメイドが宛がわれるだけですもん。エロゲでこの手のご都合主義にツッコミを入れちゃダメなのは分かっていますが、曲がりなりにも「ご主人様」と呼ばれる立場の人間なら、それ相応の器を持っていてくださいよっ。自分で財を成して、豪邸を建てて、メイドを雇ったわけではなく、親から与えられたメイドを従えてご主人様気取りとは片腹痛いわ!

敵に襲われたとき、メイドさんの尻に隠れて自分だけ守ってもらう神経も考えられません。バトルが始まれば、「なにしてんのよっ!! 早くどきなさいっ!!」と隅っこに追いやられて、そのまま縮こまっているだなんて…。こんな格好悪くて情けないご主人様は初めてです。恥を知る人間ならば、普通その場でご主人様の座を辞するでしょうね~。


ちなみに、この「バトル」という要素も理解不能だったものの1つに数えられます。Fateかそこらのライトノベルにでもインスパイアされたような一切笑いどころなしの真剣なバトルには、言いようのない恥ずかしさが漂っていましたよ。

両者の剣が、十字の形に交叉する。 咲耶「“バニッシュメント”───!!」 棗「………!?」 刹那、バルムンクの剣身が漆黒に染まる。その闇は棗ちゃんの刀すら黒に染め上げ、巨大な黒の十字架を浮かび上がらせた。

こんなノリだもんなぁ…。バトルは長い、しつこい、つまらないの三重苦。1度目のバトルの最中、「さっさと終われー」と早くも嫌気が差して、2度目で「えぇ~、まだやるの~?」とウンザリ、3度目で「いい加減、空気読んでよ…」とイライラ、4度目以降は「もう勘弁してください!!」と泣きが入りました。こっちもCtrlボタンを力の限り押してスキップしているんですが、なかなか終わってくれません。2週目のプレイなら、これがまた最初から繰り返し。3週目のプレイなら、これがまた……なので、やっていられませんよ。

しかもこのバトル、常に身内で行われる演習の繰り返しであって、「敵との戦い」は最初の零那を除いて1度もないという驚愕の事実! 毎回同じ場所で、4人のメイドをシャッフル(重複あり)して戦うようなスリルも興奮もへったくれもないバトル、一体どこの誰が楽しめるんだって話ですよ!! ふざけるなああ!!


ホント何から何まで理解不能で、どうしてこんな作品を作ろうと思ったんだろうという、根本的な部分が謎。モノモノであれだけ大きな功績を残してくれた箒星さんが、まさかこんな勘違い作品をやっちゃうとはね…。期待していただけに、心底ガッカリ。まぁ、今回はシナリオが悪いというより、企画段階で既に破綻していたと言えるんですけど…。

それに1つフォローしておくなら、エッチシーンは外していないんですよ。頼んでもいないのに勝手にストーリーやバトルに力を入れて、エロが手抜きされている作品を、私は何度も何度も見せられてきましたが(Schoolぷろじぇくと☆とかねっ)、メイドさんと大きな剣はそれに該当しない。

回数的には1人辺り6回程度のシーンが用意されてありますし、ベッドで抱き合いながら素股、食卓に隠れながらバックで挿入、お互い自慰行為を見せ合う、メガネをかけさせてフェラ……とシチュエーションが実に豊富。男子生徒が咲耶の噂をしているのを聞きながら、個室トイレで咲耶とエッチするというシチュエーションは特に良かったなー。驚くべきことにこれらのエッチシーンはシチュエーションが1つとして被っていません。これってかなりすごくないですか? 複数人プレイも取り揃えられており、当然全員とのハーレムもありました。

ですから、評価を付けるのが結構難しい…。エロが手抜きで、自己満足なバトルに現(うつつ)を抜かしているだけの作品だったら、どうしようもない駄作として斬り捨ててやりましたが、やることはやっていますので。方向が明後日を向いているとはいえ、日常シーン、戦闘シーン、エッチシーンのいずれにも一切の妥協がない、メチャクチャ気合いの入っている大作ですし…。


とりあえず、ユーザーに求められているのか? メーカーの作風に合っているのか? 原画家の持ち味を活かせているのか? 今一度、これを頭に入れてゲームを作って欲しいですね。あかざさんという超強力な絵師を抱えているんですから、奇を衒った変則的な作品じゃなくて、正攻法でOKなんですよ。今回だって「メイドさんと大きな胸」だったら、どれだけ多くの人たちが幸せになれたか。余計なことをして原画家の持ち味を潰すのは、G.J?さんだけで充分。

今回はコンセプト自体が狂っていたので、シナリオライターとしての力量は参考にはならないと思います。箒星さんが実力ある素晴らしいライターであるという認識は変わっていませんので、次こそはフツーの正統派純愛和姦エロゲでお願いします。どうか箒星さんが流れ星のように消えていきませぬよう…。

御剣咲耶が一番良かった。でも、後ろにある剣が邪魔! なんだよこれ! 表示OFFに出来ないの!? あと、ヒロイン紹介欄に「ツンデレメイド」って書くのは勘弁してください。フェラがなかったのもどうかと思う。
2006年7月24日