KISS×500 KISS権、発動
メーカー〔WINTERS〕 発売日2008年7月25日


もっと、もっと見せてくれ私に! 貴方の主観に満ちた世界を!
正気とは思えぬキャラクターたちの突飛な行動に、まともな感性では理解不能の電波な会話。ストーリーに整合性というものは露程もなく、内容はやりたい放題でしっちゃかめっちゃか。しかし、それも宜(うべ)なるかな、これは平井次郎さんの妄想世界。他人の夢の中を勝手に覗き見ているようなものですので、我々があれこれ口を出せるような次元ではないのです。誰だって、他人が見ている夢の内容にまでは干渉出来ません。

それでも、今回はさすがにメチャクチャすぎました。KISS×200では常識が、KISS×300は女性が、KISS×400では品性がそれぞれ狂っていましたが、KISS×500はそれら総てを踏まえた上で、主人公が狂いまくっている。「キスをしたら逮捕」という特殊な島の環境で生まれ育ったせいか、彼のキスに対する欲求はもはや病的なレベルで、社会に野放しにしてはいけないほどの超危険人物だったんですよ~。

幼馴染の彗星(あかり)ちゃんにでさえ、「ねえっ、なんなのっ? やっぱりソウゼンって、ちょっと足りない子なのっ???」 「ソウゼンは今、完全に脳味噌に蛆が湧いちゃってる状態なんだと思います・・・」とボロカスな言われようですからねぇ。彼女が毒舌ってわけではなく(むしろ心優しい少女)、そう言われても仕方がないぐらい、主人公のソウゼン君は常軌を逸していたんです。

電話で突然公園に呼び出しては、脈絡もなく「キスさせてくれ!」と迫ってくるぐらいですもん。その必死な願いが聞き届けられないとなると、今度は自宅に呼び出し、「キスは諦める! だから代わりにペニスに唾を垂らしてくれ!」とこれまた無茶なことを懇願してきますし…。土下座で。

結局、「キスを諦めるなら」との条件の元で彗星ちゃんは渋々彼の要望に応えてあげちゃうんですけど、ソウゼン君にはそんな厚意すら逆効果だったようで、「このままセックスさせて!」「やっぱりキスさせて!」と余計に付け上がらせてしまうのだから手に負えません。頬を何度引っぱたかれても懲りることなく、しつこくしつこくキスを迫る主人公…。まったく、こんな駄々っ子みたいな主人公、今まで見たことありませんよ! 無節操で無責任で無遠慮で、見ているこっちが恥ずかしいです!  「ウチの子がご迷惑をおかけいたしまして…」と出来の悪い息子を持った母親の気分。世間様に顔向けできない!

ただ、ここまで頭の足りない可哀想な子だと、逆に見捨てられなくなるもので…。それにぶっちゃけ、キスに対する情熱は共感できないわけじゃないですし、「口説く」「説得する」という行為が大好きな私には、難色を示す彼女にしつこく食い下がろうとする姿勢もむしろ好感。主人公は、少々(?)強引なぐらいが頼もしいです。

なので、最低の主人公だとわかっていても、その行動理念自体は忌避するものではなかったり。第一、WINTERSの作品でキスが出来ないというのは、確かにストレスが溜まります…。ソウゼン君ほどじゃないですが、「キスさせてくれ!」という欲求は少なからず私の中でも燻っていましたよ。


やがてソウゼン君はキスの出来ない島に見切りを付け、船で脱出を図ることに。新たに辿り着いた場所は“キスしまくり”との噂がある南沖の鳥島。そこで音香という名の診療所の女医と出会うことで、彼の本懐は遂げられることとなります。

ハッキリ言って、この音香との出会いがKISS×500のピーク。もうね~、音香さんは良すぎますよ!! 今までずっと拒否され続けてきたキスという願望を、“積極的に受け入れてくれる感激”は筆舌に尽くしがたいものがありました! 散々焦らされ続けてきた上でのカタルシスなので、もう言葉で説明する以上の「嬉しさ」なんですよ! まさに感無量のキスシーン!

多分、ゲームの最初に彼女が登場していたら、特別な魅力は感じなかったと思います。キスがしたくても出来なくて、キスをさせてと願っても断られて、皆からずっと変人扱いされてきた(100%変人ですけど)辛い過去があるからこそ、音香の存在に神々しさを感じてしまう。キスをすんなり受け入れてくれて、しかも自分が望む以上にあれやこれやとしてくれるわけですから、ソウゼン君ならずとも「!??!?!?!?!??!?」ってなりますよ~。他の球団は誰も見向きしてくれない中、中日だけが自分を温かく迎え入れてくれたようなもの。そりゃ中村紀洋だって恩義を感じて当然ですよね。

ともかく、明けても暮れても音香とキスしてエッチしての爛れた日々は最高。ただ、ここである程度行くところまで行ってしまった感(願望が総て満たされた感)があるので、その後がやや消化試合的な感覚になってしまったのが残念。これ以降も、新しいヒロインが続々登場して、多種多様なキスシーンがありましたけど、やっぱり音香とのキスを上回る感動や興奮はなかったです。ソウゼン君を追って南沖の鳥島にやってきた彗星、美雪、十六夜の3人も、あれだけ頑なにキスを拒んでいたのに、普通にキスを求めてくるようになってしまうんで、拍子抜け。この3人は、回数より質を大事にして欲しかったのに…。

これはエロに関しても同じことが言えますよ。エッチシーン総数103(キスシーンを含む)は確かに膨大な量ですが、代わり映えしない大味なものが多く、数字ほどの満足感は得られません。酒池肉林のハーレムエッチが多すぎたのが原因でしょう。まさにこれが代わり映えしない大味なエッチシーンの元凶と言える存在でしたから。原画のミヤスリサさんも1つ1つ構図を変えて工夫はされていたものの、後半は既視感が拭えませんでした。

エッチシーンのほとんどが全裸だったというのも不満です。エッチが始まる直前に、ヒロインがすっぽんぽーんと自ら服を脱ぎ捨てちゃうんですよ。野外だろうが衆目の前だろうがお構いなし。一瞬にして一糸纏わぬ姿になってしまうから絵的に単調になりがち。何より、情緒がありません。せめて主人公が脱がせてくれなきゃ~。


まぁ、いろいろと文句を垂れてしまいましたけど、エロいのはエロいんですよ? 妄想垂れ流しの非常識な世界だからこそ、通常では絶対に味わえない興奮がありますし、挿入シーンでもキスを忘れないなど、徹底したフェティシズムに溢れていました。そして、音香さんがそうであったように、倒錯した願望を「受け入れられる」「わかってもらえる」ことこそが最大のエロスなのかもしれません。

万人どころか千人にも薦められないカオスの権化というべきエロゲですけど、一度魅入られると虜になってしまうこと請け合い。平井ワールドにどっぷりハマってみたい方は是非。理解されないことを理解される喜び、貴方も味わってみませんか?

KISS×500では、立ち絵がバストアップではなく、全身像で描かれています。背景との遠近感を完全に無視している上に、室内でも土足のままだったりするので、正直、かなりチープな印象を受けます。

ですが、“立ち絵でキャラの全身像が見える”のは以前より私が望んでいたこと。ディスプレイを縦置きにしてプレイしたいと衝動に駆られるぐらい「全身像」にはこだわりがあるんで、これは嬉しかったですね。勿論、ちゃんと背景との遠近感を考え、不自然でないものを望みたいですが。

KISS×400ではイマイチだった唾液音は改善されました。ただ、フィニッシュにおいて口内射精がほとんどないのは気になる人も多いでしょうね。選択することも許されずに、ほとんど顔ですので。

白衣を纏うグラマラスな肢体と、古めかしい口調が特徴的な天津風音香。最近、うる星やつらの文庫本をまとめ買いしたせいで、サクラさんとキャラが被りましたよ~。

音香との最初のキスシーンの表情は堪らなく好き。戸惑い気味で不意に唇を奪われた表情が良い!
2008年8月1日