発売日 2002年10月25日
メーカー Silky’s 
寡作な芸術家
かつて、Dragon Knight4や同級生シリーズといった伝説の作品を手掛けた事で、その名は遍(あまね)く知れ渡っている竹井正樹画伯。古くからエロゲを嗜んでいる人には、取分けその存在は特別なものとして映るでしょう。

ストーリーは、実兄の遺言書を拠り所に強大な山王時家へ単身乗り込み、金と女を手中にしてしまおうとする燃える展開。人生で二度と訪れないであろうこのチャンスを見事掴み取れるのか、無様に返り討ちにあってしまうのか。覚悟を決死とした主人公が対峙する遺産戦争の構図は実に興味深いです。

ですが、この素敵な展開は、なんというか設定だけに留まっている感があって、泥沼の遺産騒動の顛末にはそれほど執着してはいなかったりします。焦点はあくまでエッチシーン(陵辱)であり、ストーリー部分は合間合間の息抜き程度。個人的には、「せっかく良くできた設定なんだから、もっと遺産に纏わる腹黒いいざこざを突っ込んでみても良かったのでは?」という思いもありましたね。

エッチシーン優先のポリシーは、作中のエッチシーンの数に反映されていて、総イベントの9割が官能シーン。山王寺家4人の女性には満遍なくエッチシーンが用意されいおり、バリエーションもそれぞれ豊富。強烈なインパクトこそなかったものの、粒は揃っていますので万人受けできるはず。存外呆気なく過ぎ去ってしまう1週間の短い物語でも、昼夜問わず頑張ってくれる主人公のおかげで、エッチシーンにはまったく事欠きませんでした。

ただし、序盤からエッチシーンが頻発するということは、山王時家の面々が容易に陥落してしまうというマイナス面も含んでいます。日本有数の財産家として、相応のプライドも持ち合わせているであろう彼女たち(特に年長の2人)が1日2日で、馬の骨の主人公にあっさり手懐けられてしまうのはやや納得のいかないところ。手強そうに思えた彼女らは見掛け倒しもいいとこ。「山王時の女どもを如何にして陥落させるか」というのも妙味であっただけに、楽勝で堕ちてしまう手緩さは味気なかったものです。

かといって、私が指摘するようにストーリーの整合性を正されてしまったら、今度はせっかく余すところなく詰め込まれていたエッチシーンが台無しになっちゃうわけなんで、あまり頭ごなしには否定出来ませんが…。結局、拍子抜けに終わってしまったストーリーも、エロ優先のために見て見ぬフリとしておきましょうか。

とりあえず、これだけエロが詰め込まれた作品も有数でありますので、竹井さんの絵に抵抗がない方なら、購入に躊躇う必要はないでしょう。萌えが持て囃される現状ではアウトオブデートな竹井さんの絵ですが、女系家族の作品の雰囲気には抜群にそぐなうものであるとは言えます。

奴隷介護、肢体を洗うと同様、テキストには香しいオッサン臭さが漂っています。誤解しないで頂きたいのが、このオッサン臭さというのは悪口ではなく、誉め言葉であるということ。「卑猥」「淫靡」「妖艶」これらのキーワードで彩られるエロティシズムは、今後も絶やすことなく続けて欲しいものです。

遺産を巡って対立するドロドロの人間関係の渦中、一人だけ無害を装う純粋無垢なお嬢様、山王時麗。そのあまりにイノセンスな彼女には、逆に「コイツ裏がある…」と終始疑いの眼を向けていたのですが、それはとても失礼な懐疑であったよう。

彼女は正真正銘イノセンス「兄様に恋人が出来るまで麗が変わりになってあげるの」を素で実践してくれる可愛すぎる娘です。彼女相手なら、簡単に情に絆(ほだ)されてしまう主人公の情けなさも共感できますね。語尾が「~なの」の喋り方もOK。家族計画の末莉、ダ・カーポの音夢に続く至高の妹キャラの3人目に選定します。
2002年11月7日