発売日 2013年4月25日
メーカー elf 
やんごとなきセクハラ革命
そ、そんな。1週間前に急に発売とか言われましても。発売前のゲーム内容の情報は一切なし。「1週間後旅行行くから10時集合な!」とだけ告げられ、行き先も何も教えてくれないこの不安感。各社、ユーザーの顔色を伺いながら至れり尽くせりの情報を提供しているというのに、「ガタガタ言わずに俺に付いてこい」と亭主関白を気取るelfさんは、なんともまぁ、時代錯誤の殿様商売ですよ。麻呂だけにねっ!

それにしても、麻呂で医者でガテン系とはまったく当を得ない世界観。主人公柿之股彦麻呂(45)は付け焼き刃ではない生粋のおじゃる系らしいのですが、なにゆえおじゃる系なのかの説明は一切なし。顔面白塗りの明らかに怪しい風貌でありながら、周りがその点について一切言及しなかったり、非常にシュールな世界観となっています。


ゲーム序盤は、闇医者として婦人科医を開業している主人公によるセクハラ診察がメイン。問診と称していやらしい質問したり、触診と称しておっぱいを揉んだり、かつてelfさんがファンクラブ専用ソフトとして頒布していた「悪いお医者さんに騙された杏奈ちゃん」と酷似した作風です。

彦麻呂「今日はどうされましたぁ?」
咲美 「ちょっとお腹が痛くて」
彦麻呂「では、さっそくオッパイから診てみましょう」
咲美 「え?」
彦麻呂「オッパイですよ、オッパイ。何度も言わせないでね」

無茶苦茶言っているくせになんか逆ギレ気味なのがウケる(笑) しかし、基本的に彦麻呂のやり口は慎重且つ巧妙。相手の警戒心を和らげながら、得意の口八丁で丸め込み、じっくりネチネチと攻めていくタイプです。ヒロインの綾瀬咲美(25)はバストの大きさが際立つ美人さんなので、まずはその巨乳に狙いを定めてセクハラを仕掛けていく感じですね。

この辺りは特にどうってことない普通のセクハラ診察ゲーだったのですが、捻りが利いてくるのは咲美の旦那が絡んできてから。

私には、セクハラとは“密室の秘め事”であるという固定観念がありました。セクハラは、他の人間に知られてしまうことだけは絶対に避けなくてはならないものだと。しかし、ここで彦麻呂は咲美の旦那を敢えて診察室に呼び寄せるという大胆な手段に打って出るのです。

最も排除すべき旦那という存在を積極的に招き入れてしまうなんて、まさに逆転の発想。大袈裟かもしれませんが、従来のセクハラの概念を揺るがす革命的アイディアであると私は感じましたよ! とにかく、彦麻呂のセクハラ診察は旦那が同席してからが本番!

この時点では、咲美はすっかり彦麻呂のことを信頼しきっていますので、セクハラ丸出しの診察にも疑いを持ちません。が、旦那は明らかに彦麻呂の診察を訝しがり、妻への破廉恥行為の数々に対して苦虫を噛み潰すような面持ちで震えている。そんな旦那の葛藤を横目にセクハラをエスカレートさせていくのは、正直超楽しい(笑)

秀逸だったのは、診察台に咲美を仰向けで寝かせた上で、上半身とか半身の境目をカーテンで遮ったこと。旦那には咲美の上半身しか見えず、カーテンの向こう側にいる彦麻呂の動きは見えない状態。それをいいことに彦麻呂は咲美の性器を指で弄り、果てはチューブ挿入と偽り自らのペニスを突き刺してしまう。

咲美は必死に平静を装っているけれど、実は下半身は彦麻呂に犯されている。そうとは知らずに旦那は妻の手を握りながら励ましている。この何ともいえないもどかしさ。

寝取られ(寝取り)に関して門外漢の私が偉そうに言うのもなんですが、寝取られとは常に心と身体のせめぎ合いであり、その二律背反に魅力を感じるものなんだと思います。その精髄をこのシーンでは見事に表現できているんですよね。上半身は咲美の心を、下半身は身体を表していて、心は旦那にあるが、身体は他の男に捧げているという、寝取り寝取られの妙味を視覚的に表現した実に奥深い1シーンと仕上がっているのです。「よくこういうことが思いつくもんだなぁ」と私は感心しきり。


ちなみに、上記の展開はバッドエンドルート。もう1つの正規ルートでは、行き過ぎたセクハラ診察に激昂した旦那が彦麻呂に掴みかかり、その両手を骨折させてしまうという展開になります。

両手が使えなくなった彦麻呂は診察を続けることはできず、静かに自宅の部屋で引きこもることに。すると、旦那の不祥事に責任を感じた咲美が、彦麻呂の自宅までわざわざ看護にやってくるのです。彦麻呂が事件を表沙汰にしなかったのは、自身が闇医者というやましい立場にあるがゆえなのですが、咲美は旦那と自分を庇って黙ってくれたと勘違いして素直に恩義を感じているんですね。

それから始まる咲美の甲斐甲斐しい看護。食事を作って食べさせてくれたり、お風呂で背中を流してくれたり、おしっこするのを手伝ってくれたり(ナース服の女性が紙袋を被り、箸でペニスを摘むという何ともいえないエロス)、咲美の温かい献身的な優しさが身に染みます

この辺は土天冥海さんの真骨頂というか、本当に“女性の優しさ”を描くのが上手い。エロゲのヒロインなんてみんな男(主人公)に優しいのは当たり前なんですが、土天冥海さんの描くヒロインからは表層的な優しさではなく、情の深さを感じられるんですよね~。そこがいい。

看護を通した共同生活を続けていく中で、次第に彦麻呂と咲美にそれぞれ心境の変化が。あくまで獲物の1人に過ぎなかった咲美に彦麻呂は心から惹かれるようになり、一方の咲美も、愛する旦那がいながら彦麻呂に少しずつ気持ちが傾き始める。

彦麻呂は自らが恋に落ちたことを自覚すると、狩衣と立烏帽子(たてえぼし)の正装に着替え、夜這いを決行します。

レイプには大反対な私ですけど、ここでの夜這いは咲美の心を開けるための最後の一押し。立場ある人妻を理屈と能書きだけで落とすことはできませんので、最後の仕上げは、男から強引に迫って身体の結びつきを求めるのが作法というものでしょう。だから、これはレイプのようであってレイプではないものと解釈していますよ!

陵辱なのか寝取られなのかギャグなのかジャンルさえも不確かな作品でしたが、実のところ中年主人公の純愛モノだったというオチ。

彦摩呂は見た目通り珍妙なキャラクターで、最初は「こんな気持ち悪い奴に感情移入できるか!」とも思ったのですが、ユーモラスでときにカッコイイ彼は次第に愛すべき主人公に。こういうところはあの鬼作さんに通じますね。ていうか、シナリオライターは鬼作と同じ人ですよね? ね?


最後の夜這いシーンのクォリティは異常。テキストの良さも勿論あるんですが、アニメーションの出来が異次元なんですよ。他のエロゲだと、まるでおっぱい自身が意思を持っているかのように縦横無尽に暴れ回る乳揺れですが、この作品ではバックから突いた振動がお尻・腰へと伝播して、胸の揺れへと繋がるこだわりよう。この徹底したリアルさが最高の臨場感を生み出しているんですよ。麻呂の腰の動きも気持ち悪いぐらいリアルですし(笑)

ふんだんなアニメーションを施しながら、一枚絵としても最高のクォリティを保っているのがelfさんの素晴らしさ。月明かりに照らされた咲美の身体の美しさには溜息が漏れます。このおっぱいの質感は世界一美しいと思う。elfは世界に誇れる日本の匠。

綾瀬咲美は、「ボクの彼女はガテン系」のヒロイン海藤美咲のセルフオマージュと言っていい存在。旦那の名前も同じマー君だったりしますし、この作品の世界はパラレルワールド的な位置付けなんでしょうかね?
2013年5月10日