発売日 2010年10月29日
メーカー Sugar Pot 
なんて無力な…この支配からの…
冴えない平凡な主人公の元に突然やってくる見ず知らずの美少女。約束だの掟だの男に都合の良い理由を引っ提げて強引に迫ってくる彼女に対し、主人公はその気がなさそうに拒みながらも、結局最後は済し崩し的に彼女の求愛を受け入れて結ばれる。そんなくだらない茶番はもうたくさんという思いから、「いきなり美少女が家に押しかけ結婚を迫ってきてはならない」となでしこやまとの十戒にしたためました。

そういう意味では、今回のお嫁さん候補があらわれた!コマンドは?(以下、お嫁コマンド)など論ずるに値しない作品だと言えるのですが、エロゲの定番化したお約束を敢えて茶化して(皮肉を込めて)用いるおるごぅるさんのシナリオならば、額面通りの“押しかけ美少女モノ”とは受け取れない。つまり、こちらとしては「おるごぅるさんならベタなお約束を裏切ってくれるはず!」という期待感があったわけでして。


三姉妹+幼馴染によって繰り広げられる仁義なきお嫁さんレース。それは健気な女の娘を演じて彼の気を惹くような生温いやり口ではなく、自らの身体を駆使した実力行使による籠絡合戦。従来の“押しかけ美少女モノ”とは一線を画した泥仕合の様相を見せてくれていました。

その一方で、“押しかけ美少女モノ”の悪い部分、その場その場のアプローチにフラフラ流される主人公の主体性のなさもしっかり受け継がれていたのはマイナス。この手の複数の美少女から一斉に求愛される話では、既に心に決めた本命の女性がいないと、どうしても主人公のヘタレっぷりが強調されますねぇ。

らんま1/2の乱馬のように、シャンプーや右京らに迫られても、あかねという本命(表面に出さなくても)を大切にしていれば逆に男気を感じさせてくれるものですが、残念ながらこの主人公にそんな器量はありませんでした。幼馴染の葉月の方はせっかくあかねに近い感じのキャラだったのに、肝心の主人公の気持ちがルートに入らない限り彼女へ向かないんで、芯となるヒロインになりきれていない。もっと葉月を大事にしてあげて欲しかったですよ…。いきなり現れた見ず知らずの変態女と同列扱いはひどいっ。

結果として、お嫁コマンドは、“押しかけ美少女モノ”のスタンダードにもアンチテーゼにもなりきれていない、中途半端な位置付けの作品に留まってしまっていた感が否めません。お約束を求めていた人、そうでない人の両者にとって不満足感があるんじゃないかなぁ~と。おるごぅる作品としては、正直やや期待ハズレだったと言わざるを得ないんですが、まぁ、今回はストーリーよりエロに力を入れているっぽいので…。


しにきす以降、エロ方面の減退(内容ではなく回数)が著しかったですが、お嫁コマンドでは1人頭、平均18個弱のエッチシーンが用意されているなど、久々の大盤振る舞い。最も印象に残ったのは、一番エッチシーンの少なかった涼乃あやかだったりしますけどね。あやかさんは葉月の母親で、お嫁さん候補ではないサブヒロイン。そんな彼女の何がすごかったかって、“経験値の高さ”ですよ。男の身体を知り尽くした百戦錬磨のテクニックに、相手の思考を先読みして絡め取る頭脳的なプレイ。引いては押す、押しては引くの駆け引きが絶妙すぎるっっ! 経験豊富な熟女ヒロインはこれまでに何人も見てきましたけど、本当の意味での大人の女性の凄みを感じたのはこれが初めてかも…。主人公なんて完全に子供扱いですから。

今回に限ったことではありませんが、おるごぅるさんのエッチシーンは“無力感”がキーになっていると思います。肉体的快楽の前に為す術のない男の無力感。男に反抗されると太刀打ちできなくなる女の無力感。常にどちらかが支配する側される側のロールを担い、相手に己の無力さを痛感させるようなセックスを行う。元々寝取られを好んでやっていたライターさんですし、こういった鬱要素の絡む行為がお好きなんでしょうね。

男女の心理描写には定評がありますから、こういうことをやらせると非常に上手いのは確か。恋人同士が互いに主導権を握り合おうとする関係は私も大好きですし、エロいのは間違いなくエロいのですが、やはり無力・支配といった尾崎的フレーズの並ぶエッチは気が滅入ってしまう。双方合意で行われているとはいえ、レイプ・逆レイプ紛いのやり過ぎと感じるエッチシーンもあり、不快感がなかったわけではないです。包茎弄り・飲尿・拘束・ペニバンなど、ハードル高めの変態行為が多数なのも評価が分かれるところ。私としては、軋むベッドの上で優しさを持ち寄り、きつく身体を抱きしめ合うようなラブラブエッチをもっと見たかったのが偽らざる気持ちですよ。


実質これがおるごぅるさんの卒業作ということで、最後に自分がやりたかったエッチシーンを全部注ぎ込んだのかなという思いも。“押しかけ美少女モノ”という口当たりの優しいテーマでありながら、内容はとってもアナーキーなエロゲなので、予備知識がない人はチョット戸惑うかもしれませんね。ファンの私でも戸惑うぐらいですから。

何にせよ、これほど有能で個性的なライターを失ってしまったのはファン心理を抜きにしても大変な痛手。最後なので、これまでたくさんの素敵な作品をありがとうと感謝の念を送りたいところですが、まだおるごぅるさんの引退を認めたくない自分もいます…。引退なんていつでも撤回していいですよ! ジョーダンやクレメンスやファーブといったアメリカの偉大なるプレイヤーたちだって、引退発表でファンを涙させたあと、平気でのこのこ戻ってきたんですから! 二度も三度も! 引退撤回は恥ずかしいことじゃない! また気が向いたらいつでも戻ってきてください。

葉月と雪姫の声はどうにかならなかったかなー。葉月はやたらとキンキンした甲高い声で、雪姫は無感情ヒロインとはいえ棒読みすぎる…。どちらも演技過剰のように思いました。大波こなみさんも民安ともえさんも好きな声優さんなのに。

あやかさんはいいキャラしている。「美琴さんが制服を着ても、安っぽいイメージクラブにしか見えませんわよ」 優しい語り口で対抗意識丸出しの大人げない発言をするから好き。以前、おるごぅるさんがブログでテクニシャンタイプの年上ヒロインやりたいと語っていましたが、これでやり尽くしたのかな。
2010年11月21日