ジョーカー・ゲーム第5話「ロビンソン」雑感

伊沢和男を名乗り、写真師としてロンドンに潜伏していた神永が、スパイの嫌疑で英国諜報機関に拘束される。自分はスパイではないと必死にしらを切る神永だったが、度重なる尋問と自白剤の投与、そして結城中佐に売られたというショックで心が折れ、とうとうスパイである事実を白状してしまう。

神永を籠絡させたのは、英国のスパイマスターと呼ばれるハワード・マークス。マークスの指示によって、本国に虚偽の情報を打電させられるなど、神永はイギリスの二重スパイと成り果てる。D機関のスパイが敵国に捕らえられ、寝返ったというのはなかなかショッキングでしたが、これらは総て任務の範疇であろうというのはなんとなく私も気付いていました

確かにその読みは大きくは外れていなかったです。神永は協力すると見せかけてマークスを欺き、隙を突いて脱出を図る。見張りの男を伸したあと、外部へと通ずる非常階段を目指して一目散。“脱出”はスパイアクションの華ですから、ここはかなりテンション高まりましたね!

なお、神永が脱出ルートを把握していたのは、室内に設えられていた館内地図を一度目にしていたから。横目でちらっと確認した程度でしたが、その一瞬で神永は館内の構造を完璧に頭に叩き込んでいたのですから恐れ入ります。

ところが、記憶通りに非常階段がある場所に辿り着いても、そこにあるはずの非常階段がない。実はこれはマークスの罠。部屋にあった見取り図は偽であり、それを信じた神永はまんまと袋小路へと誘い込まれてしまった。一瞬で地図を記憶する神永もすごかったですが、先んじてトラップを仕掛けていたマークスは更に一枚上手。スパイマスターの名は伊達じゃございません。

捕虜が逃げ出した事実は瞬く間に知れ渡り、すぐにでも追跡の手が及んでくる。逃げ場を失くした神永は「ここまでか」と観念しかけたものの、ドアの端に記された♀の文字に気付く。その部屋に逃げ込んだ神永は、程なくして捜索にやってきた1人の兵士に意図的に見過ごされ、事なきを得ることができた。

この♀マークは、ヴィーナス(金星)の意味する記号であり、ロビンソン・クルーソーの登場人物“フライデー”に準えた暗号。つまり、神永をわざと逃がした兵士はD機関の息がかかったもう1人のスパイだったんですね! 普段から敵方の組織に潜り込み、いざというときだけD機関に荷担する内通者、即ち“スリーパー”だったわけ。

結城中佐が周到なのは、このスリーパーの存在を神永には知らせていなかったこと。任務遂行前に餞別と称してロビンソン・クルーソーの小説を渡し、ヒントだけを与えていた状態。明確には教えられていないからこそ、どんなに自白を強要されてもスリーパーの存在が明るみに出ることはなかったのです。

「敵のスパイを手に入れて、あるいは敵の暗号を解読した側は、次は必ず手に入れたスパイを使って偽情報を相手側に流したいという欲求に囚われる」
「そして、そのときこそが貴様達が脱出するチャンスなのだ」

マークスに強要された偽情報の打電も、“暗号を一言一句間違えない暗号電文はSOSの合図”という決まりがあるため、逆にD機関は作戦が順調に推移していることの確信を深める結果に。窮地に追い込まれていたようで、どこまでも結城中佐の筋書き通りだったのですねー。

今回の作戦の目的は、女相手に機密をベラベラ喋る無能外交官を追い込み、日本の外務省の責任問題を立証させること。情報漏洩の証拠はないと責任逃れに終始する外務省も、神永が英国諜報機関に拘束されれば情報漏洩の失態を認めざるを得ない。そのために神永には一度わざと敵に捕まってもらい、その上で自力で脱出しろという無茶な任務が下されたのでした。

虚実入り乱れる複雑な思惑の中、神永を介して行われたマークスVS結城中佐の高度な頭脳戦。裏の裏をかき、何手先までも見通していた結城中佐の辣腕は驚愕の一語。「敵に捕まったと思った? 実は演技だったのさ!」というオチだけでなく、そこから一歩も二歩も先行く驚きが用意されていた奥深いエピソードは、まさにスパイの醍醐味が凝縮された珠玉のエピソードだったと言えましょう。

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  1. 3~4話は本当に良いエピソードでしたね。
    動きや会話が少ないアニメだなぁと思っていましたが、それがかえって緊張しっぱなしでした。
    ロビンソンクルーソーがスパイのアレゴリー→その仲間がフライデー→金曜から金星を連想→♀の記号…
    というのが無理矢理というか、ご都合的な気もしましたが、
    高度なスパイ戦のために情報をわかりやすく伝えずに隠したと言われると納得出来ちゃいます。

    • よくもまぁ、30分の中でこれだけ濃いシナリオを落とし込めるなと。神永がわざと捕まろうとした理由が読めなかったので、「外務省の責任問題を立証するため」という動機には唸らされました。D機関は、毎回日本のお偉いさんたちに振り回されている立場なのね。

      >ロビンソンクルーソーがスパイのアレゴリー→その仲間がフライデー
      無人島で英国人の役割を演じ続けてきたのがロビンソン・クルーソーですから、スリーパーがロビンソン・クルーソーで神永がフライデーだったんだと思います。私も最初、主人公の神永がロビンソン・クルーソーだと思い込んでいましたが。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。