ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第39話「さよなら杜王町 -黄金の心-」雑感

追っ手を振り切り、姿を眩ませながら、犯行を繰り返してきた連続殺人鬼キラも、とうとう袋のネズミ。正体は白日の下に晒され、周囲は完全に包囲され、もはや逃げ場などどこにもない。だが、追い込まれたキラはこの期に及んでまだ観念しようとはしていなかった。窮地から脱する最後の秘策がキラには残されており、その一瞬のタイミングを冷静に見計らっていた。

というのがDEATH NOTEのラスト。まさに今回のジョジョのシチュエーションと瓜二つではございませんか!(笑) キラが腕時計に忍ばせていたDEATH NOTEの切れ端にニアの名前を書き込んでピンチを逃れようとしたように、吉良吉影も駆けつけた救急隊員の女性にバイツァ・ダストを仕掛け、時間逆行を発動させてこのピンチから逃れようと試みる。

キラがペンで名前を書き込もうとしたその刹那、すかさず片手を銃で撃ち抜いて阻止したのが松田。予想だにしなかった松田の活躍によって、遂にキラは万事休したのです。一方、吉良が爆弾のスイッチを押そうとしたその刹那、すかさず片手を重力で押さえつけて阻止したのが康一。予想だにしなかった康一の活躍によって、遂に吉良は万事休したのです。

もはやDEATH NOTEはジョジョ第四部のオマージュだったんじゃないかと思うほど展開が似ていた気がしますよ(笑) キラは死神リュークによって、天国とも地獄とも知れぬあの世へと連れ去られてしまいましたが、それも“絶対に振り向いてはいけない小道”に住まう怪物に天国とも地獄とも知れぬあの世へと連れ去られた吉良とリンクしますし。お互い、現行法では裁くのが困難な殺人者だけに、その末路が似通ってしまうのは当然なのかもしれませんが。

私にとって吉良吉影の死は、それこそキラこと夜神月の死と同じぐらい心に重くのしかかる出来事でした。勿論、道義的に死んで当然の悪党であったのは相違ないのですが、その特異なキャラクター性に惚れ込み、登場以来ずっと感情移入させられながら見ていましたから…。最後追い詰められたときも、心情的にはついつい吉良側を応援していた有様。ジョジョ第四部は登場人物それぞれが主人公と呼べる群像劇でしたけど、吉良吉影もその例に漏れず、ピカレスクロマンの側面もあったといえるかもしれませんね。

でも、康一君の間一髪のスリー・フリーズには痺れましたし、時間を止めてトドメをさした承太郎のオラオララッシュに超スカッとしたのも事実ですので、本当に複雑な胸中なんです(笑) 私は吉良吉影がボロボロに朽ちていく様を見て、喜びと悲しみを同時に感じてたとしか言いようがありません。

この最終戦、仗助&早人VS吉良の構図がずっと続いていましたけど、最後に億泰・康一・承太郎にもちゃんと見せ場を用意してくれたのは嬉しかったです。承太郎が最後の美味しいところを丸ごと持っていった感ありますけど(笑) 37話では仗助の悲鳴を風の音と勘違いするという信じられない大失態をしでかしていましたが、これでなんとか元主人公の面目は保てたといえるでしょうか。あれはホントひどかった!

吉良の死後、気掛かりなのはミサミサ……ではなく、しのぶさん。吉良を愛していた彼女の行く末を考えると暗澹としますね。途中のラブコメ展開を見ていると、「もうこのまま2人+早人で仲良く静かに暮らしてほしい」という思いに駆られていたぐらいですから。ミサミサはキラが死んだあと獄中で後追い自殺したとされていますが、しのぶさんはどうか強く生きてほしい。第二の吉良として、仗助の前に立ちはだかるのもありですけど(笑)

「私は子供の頃、レオナルド・ダ・ビンチのモナ・リザってありますよね? あの絵、画集で見たときですね…」
「あれ、初めて見たとき、なんていうか…その…下品なんですが、フフフフ…、勃起、しちゃいましてね」
「手のとこだけ切り抜いて、しばらく部屋に飾ってました。貴女のも切り抜きたい…」

今回、無視できないインパクトを放っていたこの吉良のセリフ第22話感想で“性的嗜好であると推察される”と読んでいた通りの結果でしたけど、元が少年漫画なだけに、そんなディープな偏愛は詳らかに語られることもなく終わると思っていたら、これ以上ないほどストレートにぶっちゃけられて驚きました(笑) 勃起という単語が持つ破壊力よ。

ラスボスが連続殺人に及ぶようになった動機ともなれば、「死んでしまった彼女の面影を求めて…」とかついついご大層な動機を掲げたくなるもの。それを少年時代にモナ・リザを見て勃起したからなどという、極めて個人的・独善的・変態的な動機であったのが素晴らしすぎる。そんな理由で何人もの女性を殺してきたなんて許せない! という義憤と同時に、自身ではコントロールできない厄介な性癖に振り回された吉良に、一抹の同情も感じてしまいます。

ラスボスとして何もかもが異例尽くしで、強烈な人間臭さを持っていた吉良吉影は、終生忘れられないキャラとなりそう。少年の局部を柱に打ち付ける殺人鬼に始まり、モナ・リザの手を見て勃起する殺人鬼に終わるジョジョ第四部。20年前ではなく20年先行く恐るべき名作でした。

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  1. ついに終わってしまいましたね! 最後までレビューをありがとうございました。

    四部は(四部も)本当に魅力的なキャラが多くて、これで終わってしまうのがもったいないぐらいです。作者自身、ジョジョ全体の中でも仗助、岸辺露伴、吉良吉影といった四部のキャラが特に気に入っているとインタビューで話していました。実際、露伴や吉良などは外伝的な作品で主人公として登場していますし、それぐらいお気に入りなのでしょう。

    このレベルのキャラをつくりだして、話が終わったら全部捨ててまた別の新キャラを考えるなんて、なんと贅沢なんでしょう(承太郎とか一部再利用もありますが)。作者のあふれる才能に感心してしまいます。

    ちなみに、五部(当然アニメ化を期待しています)にもかっこいいキャラがたくさん出てきます。

    • 作画のクォリティがガクッと落ちて、四部は不安しかないスタートでしたが、終わってみればこの充実感。傑作だった三部にも全然引けを取らない、部分部分では遥かに凌駕していたと言えるほど、四部は面白かったです。

      特に「好きなキャラクターは?」というと、第四部の方が多かったですね。岸辺露伴や吉良吉影は視聴前から名前を聞き及んでいましたけど、有名になるだけはある。こんな特異なキャラクターが90年代に生まれていたなんて。

      五部の製作はアナウンスされませんでしたけど、当然放送はあるものだと信じて楽しみにします。

  2. 4部の感想お疲れ様でした。毎週楽しみに読ませていただきました。1部から数えると100話を超える大長編のレビューですね
    ジョジョは部ごとにまとう空気がけっこう変わるので、始めは受け入れてもらえるか心配でしたが楽しんでもらえたみたいでうれしいです、5部はまたハードボイルドな雰囲気が魅力の章になってるのでいつか見ていただけたらなと思います(アニメ化するのかな?)

    4部はやはり吉良吉影のインパクトですよね、手フェチの変態殺人鬼をここまで魅力的なキャラに仕上げたのは驚きです。こういうキャラはでてもアンジェロみたいに外道で主人公にやられるためにさっさと使い捨てられるのが常だったとおもいますが、その人間性や内面にがっつり踏み込みかつ魅力的なキャラクターに仕上げたのはすごいことだと思います。個人的に戦いの理論や流れにはときどき疑問や粗を感じることもありますが、魅力のあるキャラクターをデザインすることにかけては作者の天才性を感じますね

    エピローグだと早人の最後の台詞が切ないです、待ってる相手は別人だと考えると…
    あそこで「ところであんた、最近背が伸びた?」ってしのぶの台詞や、あと鉄塔で代わり映えしないのに毎日街を見て面白いのか?っていう問いに対する、「ええ、面白いですよ、この街はとても面白いです」っていうミキタカの台詞が好きです

    • わ、全部合わせたらもう100話ですか。そう考えると、すごい量を見てきたと感じますね。通年アニメ2年分ぐらいか。

      三部がなまじ良すぎただけに、一度リセットして新たな物語を始めたところで、これを超えることは無理だろう……と思っていたんですよね。それが嬉しい誤算。三部には三部の良さがありましたから、一概にどっちが面白かったかと比較するのは非常に難しいのですが、比肩する面白さだったのは間違いないです。「四部はマッチョじゃなくなったから見るのやめよ」なんて愚かな思考に走らなくて良かった(笑)

      >手フェチの変態殺人鬼をここまで魅力的なキャラに仕上げたのは驚き
      感想でも毎回しつこいぐらい吉良吉影について言及していた気がします。性癖以外はごく普通の一般男性。誇張してエキセントリックに描くでもなく、本当に同じ街に住んでいても不思議じゃないようなところが逆に恐怖感を煽られます。

      でも、やっぱりDIOやカーズに比べると……もしくは同時期連載の他の漫画に出てくる悪党たちと比べると、子供受けはあんまり良くなかったんじゃないかなって心配しますね。悟空が宇宙でフリーザたちと戦っていたであろう時期に、こんな小さな街で普通のサラリーマンと戦っていたら地味すぎる(笑) 現に私も、ジョジョ“なんか”全然知らないまま今に至りましたし…。お恥ずかしい話です。

      >エピローグだと早人の最後の台詞が切ないです、待ってる相手は別人だと考えると
      吉良を倒したところで、本当の父親は帰ってこない…。せっかくの勝利も、早人にとっては何1つ喜べるものはなかったでしょうね。

      救急車が吉良を轢き殺したことで、多額の賠償金が川尻家に入ってくるかなとも一瞬思いましたが、結局吉良吉影が川尻浩作に扮していた証拠が消えたから、川尻家には何の保障も支払われないっぽい? しのぶさんは専業主婦だったみたいですし、これからの生活が心配。

  3. レビューお疲れ様でした。
    古い作品なので、アニメから原作を知る人にはどんな風に映るんだろうと気になっていましたが、浅生さんの反応を見るに、やっぱりジョジョって面白いんだなと再確認しました。
    浅生さんは楽しみつつも時折冷静に「いやこれはおかしくない?」と突っ込んでましたけど、学生時代に友達とジョジョについて話してたときもそんな感じのことをあーでもないこーでもないと延々議論させていました(笑)やっぱりジョジョってヘンな作品ですねぇ。

    • ジョジョ一~二部は、正直古い作品だからこそ面白いという見方でした。今の作品では絶対あり得ないような、突飛な発想・突飛な展開がクセになって、時代錯誤感が気持ちよさになっていたのです。

      ジョジョ三部では、現代的な要素が入り交じって半々になり、四部になると完全に過去の作品というよりは現代の作品として見ていました。それほど現在主流となっているトレンドを幾つも押さえていましたし、むしろ「新しさ」と感じる場面も度々あったぐらい。吉良吉影なんて、2016年の現在でも「今までいなかった新しいラスボス像」というアバンギャルドな存在でしょ。驚きしかなかったです。

      >あーでもないこーでもないと延々議論させていました
      私もコメント欄でいろいろ議論することができて楽しかったです。疑問に答えてもらったり、勘違いを指摘されながら、やっと真意が見えてくるシーンもありましたしね。たくさんコメントをいただきましたが、誰一人ネタバレをしないでくれたのもありがたかったです(笑) マナー良い人ばかりで嬉しい。

  4. バイツァダストが発動されたら全員殺されてしまう
    とは分かっていても、追い詰められた吉良を応援する気持ちすごく分かります

    ラストは4部が一番好きですね
    1、2、3部のまとめ方も一本の筋が通っていて素敵でしたが
    4部は何本もの筋を綺麗にまとめ上げた印象だったので

    • 爽快感は三部、ハラハラ感は四部といった感じかな~。いずれにせよ、ジョジョはラストに最高の盛り上がりをちゃんと持ってきてくれるから偉いね。ラスボスとの戦いって、案外尻窄みなものが多くて、大抵その1つ手前が一番面白かったりするのですけど。

      いろんな話で多岐に別れていた四部を、最後これだけ綺麗にまとめてくれたのですから、何も言うことはありません。最高のラスト。雪でスリップする車を助けてくれた仗助に似た人の存在は忘れました(笑)

  5. とうとう4部も終わってしまいましたね〜。毎週の楽しみが無くなってしまった…(3部の最終回の時も全く同じコメントをしたような記憶が)
    しかし最終話に主人公の仗助は殆ど活躍しませんでしたね。最後に父親の財布をくすねたくらいで(笑)

    >しのぶさんはどうか強く生きてほしい
    今週は勃起やら押すねッやら印象に残るセリフがありましたが、早人の「ぼくもパパが帰ってから一緒に食べるよ」が泣けました。
    これから絶対に帰ってこないパパを待ち続ける川尻家は精神的にも経済的にもつらい生活になるでしょうが、ミサミサとは違ってしのぶさんには立派な息子がいるので、きっと未来には希望があるんじゃないかなと思いたい。

    >あの世へと連れ去られた吉良
    ちなみにスピンオフ短編「デッドマンズQ」で、死んだ吉良の「その後」が描かれていますよ。
    ついでに岸辺露伴スピンオフの「岸辺露伴は動かない」の第1話も一緒に収録されているので、興味があれば是非。

    • 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

      尺的には3クールで三部よりも短縮されていた第四部ですが、途中分割で間を開けることがなかった分、「土日はジョジョを見る」という習慣化が染みついていた気がします。終わってしまったことの喪失感は半端ないですね。9ヶ月もの間楽しませてくれて本当にありがとうございます。

      >最終話に主人公の仗助は殆ど活躍しませんでした
      ラス前で活躍を見せてくれたとはいえ、最後の美味しいところを前部の主人公に持って行かれるとは(笑) コメントの中でも、承太郎が最後美味しいところ持っていきそうと危惧(?)していたと思いますが、現実のことになってしまいましたね。やっぱり、時間止める能力は万能すぎる感があります。使えるのはDIO戦だけに限っても良かったかも?

      >しのぶさんには立派な息子がいるので、きっと未来には希望がある
      末恐ろしい(というより今現在恐ろしい)天才少年の早人君が母親の側にいてあげれば、きっと幸せな未来が待っていると信じたいです。しのぶさんなら、あっさり後添いの夫を捕まえそうな気もしますけど。

      >スピンオフ短編「デッドマンズQ」で、死んだ吉良の「その後」が描かれています
      デッドマンズQで調べてもそれらしき本が出てこなかったんですが、「死刑執行中脱獄進行中」というものを買えばいいのかな? 大量に出ている原作漫画を今から集めるのはさすがに厳しいですが、スピンオフの短編なら1冊だけ買ってもいいような気がしてきました。吉良の「その後」、気になりますし。

    • 遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
      今年も浅生さんの感想記事楽しみにしてますね〜。

      >デッドマンズQで調べてもそれらしき本が出てこなかった
      すみません紛らわしかったですね、仰る通り「死刑執行中脱獄進行中」の中に収録されています。
      オリジナルのも含めて荒木先生らしい面白い短編ばかりなのでオススメですよ。
      ただデッドマンズQと岸辺露伴は動かないはジョジョのスピンオフではありますが、ストーリーの続きと言うよりはスタンドも出てこない完全な番外編なので、「話の続き」のようなものを期待しているとちょっと肩透かしかも知れません。

    • 実はもう死刑執行中脱獄進行中を購入して読了しました。そのうちと思っていたら、読まなくなるので(笑)

      感想としては、“難しかった”というのが正直なところです。やはりいきなり短編集から入るのは無謀だったのか、荒木さん独特の作風・描写・世界観に戸惑いがあり、内容を理解するのにも一苦労という感じでした(後書きを読んだあとにもう一度読み直して理解したり)。

      「岸辺露伴は動かない」「デッドマンズQ」はジョジョの登場人物が出ているとはいえ、ジョジョという作品の延長線上ではなく、まったく別個の作品という印象。デッドマンズQの吉良吉影は私の知っている吉良吉影とは明らかに別キャラでしたし…(ファンからすればこれこそが吉良吉影なのかもしれませんが)。

      なので、“ジョジョのスピンオフ”という当初の期待からは逸れてしまいましたが、1つの短編集としてはフツーに面白かったです。作画も引き込まれるというか、荒木さんのヴィジュアルセンスの凄みを感じましたよ。漫画というよりアートの域。デッドマンズQ版の吉良吉影の見た目、格好良すぎでしょ。

  6. 視聴者サイドだとラストバトルで盛り上がったけど、救急隊員や野次馬サイドだとシュールですね。
    怪我してるリーマン相手に、小学生・2m近い大男・体に木片が刺さってるヤンキープラスαの集団が
    なにか叫んでると思ったら突然リーマンがぶっ飛んで死亡。 まさにポルナレフ状態。

    早人がいなければ吉良に勝てなかったんだし、川尻家にはSPW財団から今後の援助があってもいいと思う。

    • 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

      確かに、事情を知らぬ者には、まったく状況が飲み込めなかったと思います(笑) とりあえず、大怪我をしている男を助けようと駆け寄ってみたら、いきなり訳のわからない性癖を告白される始末。

      「私は彼を助けようと思ったら、いつの間にか性癖を聞かされていた」 な、何を言ってるのかわからねーと思うが、私も何をされたのかわからなかった…。頭がどうにかなりそうだった…。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。