Fate/Zero第16話「栄誉の果て」雑感

ええーー……。いくらなんでも今回ひどすぎないですか? 騎士同士の決闘に水を差した挙げ句、ケイネスを許嫁もろとも騙し討ちで殺害させるなんて…。死にきれず、地獄の苦しみにのたうち回るケイネスが「殺してくれ…」と哀願しているのに、一瞥もなく「悪いが、それはできない契約だ」と突き放す切嗣は最低すぎる。これまで切嗣の所行に好意的だった私でも、今回ばかりはさすがに擁護できそうにない。幻滅ですよ…。

妻アイリスフィール同様、どうやら私はまだ切嗣の悪辣さを侮っていたようで、想像を絶するあまりの衝撃展開に思考が追いつかず、脊髄反射で一度は切嗣が憎悪の対象になりかけました

しかし、この残虐非道も彼の信念と目的意識があればこそ。戦争そのものが掛け値なしの地獄であると見做す切嗣は、戦争賛美とも受け取れる英雄の武勇譚を忌々しく感じるほどの厭戦家。戦争を心の底から憎む一方、戦争は人類にとって不可避である現実も受け止めていて、ならば最大の効率と最小の浪費で、最短のうちに処理をつけるのが最善の方法だと考える。

人類はどれだけ死体の山を積み上げようと、その真実に気付かない。いつの時代も、勇猛果敢な英雄サマが、華やかな武勇譚で人々の目を眩ませてきたからだ。血を流すことの邪悪さを認めようともしない馬鹿どもが余計な意地を張るせいで、人間の本質は、石器時代から一歩も前に進んじゃいない!

極端といえばこれ以上ないほど極端ですし、この思想が真理と呼べるのかどうかは難しくて私にはわかりません。けれど、正しい正しくないを論じることに大して意味はない。どうせ、正解なんてあるわけないんですから。

結局大切なことは、どれだけ立派な信念を持っているかより、どれだけ自身の信念に従って行動できるか。私は行動こそが万事の価値を定めるバロメーターだと思いますね。国家を憂いてネットで息巻くより、真面目に働いて国に税金を納める方がよっぽど愛国的であるように。

僕がこの冬木で流す血を、人類最後の流血にしてみせる。

Fate/Zero全マスターの中で、最も聖杯を欲しているのは間違いなく切嗣。目的に向かってがむしゃらに邁進する姿が尊いのです。目的が良いことか悪いことか、正しいのか間違いなのかは二の次三の次であり、ぶっちゃけ、私にはどうでもいいこと。今回の件で、一瞬切嗣が嫌いになりかけた私でも、今では逆に清濁ひっくるめて切嗣の総てを好きになることができましたよ!!

切嗣の好き嫌いはともかくとしても、今回の脚本は本当に神懸かっていましたね。全力を尽くして戦うために敢えて左手を封じるという稀代な騎士道精神を見せたセイバーとランサーの決闘ですら、ただの前振りに過ぎなかったなんて。

ランサーは本当に報われない。マスターとの溝は最後まで埋まらず、自身のささやかな本懐は叶わず、唯一真正面からぶつかってくれたセイバーに対しても、最後は騎士道を利用して自身を貶めた卑怯者と誤解しながら朽ちていった…。

そんな不憫なランサーすらぶっちぎって不幸なケイネス。小物臭が漂う驕り高ぶった感情的な発言のせいで、彼のことを嫌ったり軽んじたりする人は多かったですけど、私は最初から彼への好感度は揺るぎませんでした。

何故なら、ケイネスさんは愛のキャラクターだから。「ソラウに認められたい」という思いで聖杯戦争戦に挑み、最後は「ソラウを助けたい」という思いで聖杯戦争を諦めた。ソラウは決してケイネスのことを愛してはいなかったけれど、それでもケイネスは一途にソラウのことを恋慕していた。そんなケイネスが愚かしくもあり、最高にカッコイイとも思えたんです。

悔し涙を流しながら切嗣の契約に同意して、栄光も自尊心も総てを失ってしまったケイネスが、唯一残ったソラウを愛おしそうに抱き寄せていた姿は泣ける…。それすらも踏みにじった切嗣は本当に最悪な奴ですがっっ! この外道っ! 鬼畜っ! 悪魔っ! ああ、でも大好きだっ…!

被害者側と加害者側、その両方すら愛せてしまうFate/Zeroの素晴らしさ。普通は片方に感情移入すれば、もう一方は嫌いになってしまうものなのに。ディルムッドが好きだからケイネスが嫌い、ケイネスが好きだから切嗣が嫌い、切嗣が好きだからセイバーが嫌い……といったことは一切ない。それは正邪も思想も飛び越えて、全員の生き様が気高く美しいからに他なりません。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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