Fate/Zero第8話「魔術師殺し」雑感

ケイネスの鉄壁の防御をいとも容易く破壊せしめた起源弾の威力。原作小説では、ト書き説明で多くを占められている場面だけに、ここをどうやってアニメ化させるのかが見物でした。まさか「説明しよう! 起源弾とは──」みたいな興醒めのナレーションを入れるわけにもいかないですしね。

起源弾の特性・効果を、回想シーンを挟んで切嗣の師匠ナタリアに代弁させたのは上手い。おかげで、話の流れに支障を来すことなく起源弾の理解を促し、ついでに切嗣の名前の由来まで語られていました。この演出は見事なものだったと思います。

ただし、「なんで切嗣はさっさと起源弾を撃たなかったのか?」という疑問に対する解がない。こんな必殺武器があるなら、無駄に戦いを長引かせることなく、一撃でさっさと終わらせればよかったのにと、誰もが感じるであろう疑問が置いてけぼり。アニメ視聴者に誤解を生みかねない説明不足は、第8話の大きな失策でしたよ。

切嗣が最初に起源弾を撃たなかった理由は、ケイネスを確実に仕留めんがため。切嗣の魔術礼装・起源弾は「攻撃対象の起源を破壊する」という効力を持ち、これを魔術で干渉した場合は、術者の魔術回路がショートすることになる。その殺傷力は標的がどれだけ魔術回路を励起していたかに比例するため、起源弾を放つタイミングは、ケイネスが魔力を総動員させるシチュエーションが望ましいというわけ。

だからこそ、切嗣は最初に敢えて通常のスプリング・フィールド弾で物理的ダメージを与え、ケイネスに銃弾への警戒心を強めさせた。次なる一撃を“全力で防御させる”布石として

思惑通り、ケイネスは月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)をより強力な防御形態へと変化。結果的に、高威力の銃弾すら遮蔽する絶対の魔術障壁を繰り出したことが彼の命取りとなり、起源弾によって魔術回路をずたずたに破壊されたケイネスは、深刻な致命傷を負ってしまったのです。

絶対に魔術で防いではいけない弾丸を、物理では防ぎきれない威力の銃で放つ。二段構えといえる切嗣の悪魔的陥穽は、その行程に一切の無駄がなく、粛々と魔術師殺しを完遂させてみせた(すんでのところでランサーに邪魔立てされましたが)。

小説を読めば、隙のない完璧な策略と見事な手際に唸らざるを得ない戦いも、アニメではそういった説明が一切ないので、切嗣のすごさが全然伝わってこない…。衛宮切嗣に並々ならぬ思い入れがある私にとって、彼の屈指ともいえる見せ場がぞんざいに終わってしまったことには度し難い怒りがありますよ…!

キャスターが召還するキリのない海魔に消耗戦を強いられるセイバーとランサーが、一か八かの作戦で窮地を脱したシーンも、アニメだけ見ていると「さっさとそれやれよ」と思うでしょうね。風王鉄槌(ストライク・エア)の風に合わせてランサーが斬り込む連携技は、本来互いの連携を阿吽の呼吸で合わせないと為し得ない絶技。言葉通り一か八かだったわけですが、その難度がアニメからは伝わってきません。

「今のセイバーに左手が戻れば、ま、ざっとこんなものというわけだ」 ランサーのセリフも、最初に「自分がセイバーの左手になる」というセリフをカットしているため、本当にセイバーの左手が治癒したのかと誤解を招く

派手で迫力あるバトルは大変素晴らしいのですけど、アクションシーンばかりに力を入れるのではなく、心理描写・駆け引きといった妙もアニメはちゃんと描写して欲しい。Fate/Zeroは、マスターもサーヴァントもそれぞれが多様の思惑を抱えながら戦っているのですから。

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