僕だけがいない街第12話「宝物」雑感+総括

誰もいない病院の屋上で八代との決着。映画僕だけがいない街のラストも、同じように八代とビルの屋上で1対1になり、追い詰められた八代がペラペラ自分語りを始めるという土曜ワイド劇場ばりの茶番が始まりましたので、もしかするとアニメも同じパターンなんじゃないかとちょっと危惧していましたが、アニメの八代は最後まで狡猾で恐ろしい男でした。

記憶が戻っていることを宣言した悟に対しても動揺する素振りはなく、既にその可能性を予見していた上で、久美ちゃんを人質に取っていた周到さ。ポケットに通話状態の携帯電話を忍ばせていた罠もあっさり看破され、やはり狡知に長けたこの男を追い詰めるのは簡単ではないと、改めて強く脅威を感じさせられる相手でしたよ。

悟は未だ車椅子の不自由な身体。15年も昔の事件はとうに時効を迎え、通話状態の携帯電話で言質を取る作戦も見抜かれ、八代に対抗する術を失った八方塞がり。ここから八代をやり込める逆転の秘策はあるのだろうか、八代の発想の上を行く仕掛けを打てるのだろうかと、期待感と共にドキドキしながら私は見守りました。

藤沼悟「先生は僕を生かしておいた。15年も。それは僕が必要だったから。僕は先生の生きがいだった。僕は先生の希望だった。僕は先生の心の穴を埋めた」
八代学「違う! 違う! 違ぁぁぁう!」
藤沼悟「この世界で本当の先生を知っているのは、僕だけだよ」
八代学「そうだ…。悟、僕はもう…。僕はもう、君がいなければ生きては行けない」

それが何やら突然話が変な方向に向かい、雲行きが怪しくなってくる(2つの意味で)。壁ドンから始まった2人のやりとりはまるで恋人同士の痴話喧嘩のよう。ん…? ホモなの? ホモなの? 加代ルートでもなく愛梨ルートでもなく、一体どこで間違って八代ルートに分岐してしまったというのか…(笑)

八代は「俺はお前の未来を知ってるぞ!」という悟の苦し紛れの一言をきっかけに、15年間も悟を生かし続け、彼の目覚めを待っていた。即ち、悟そのものが彼の生きがいとなっていた。その八代の異様な執着心を見抜いて、精神的な揺さぶりで陥落させたのはまぁわからないでもないんですが、屋上から飛び降りようとするパフォーマンスって要りましたかね? 悟が死んだと八代に一瞬でも思わせることで、自分の気持ちに素直になるきっかけを作ったってこと? この辺が私にはちょっと理解できなかったので、なんか釈然としない気持ちが残ってしまいまして。

何にせよ、このあと八代は素直に罪を認めて、警察のご用に。別の世界線では殺人に誘拐に放火と悪行の限りを尽くしている極悪人の八代ですが、この世界線においては誰1人殺せなかった。悟が八代の手を最後まで汚させなかった。加代、広美、彩、美里とひとりぼっちの人間に手を差し伸べてきた悟が、最後は八代という孤独な犯罪者にまで手を差し伸べたというのは、物語としての美しさを感じます。

そういった評価がある一方で、どうもすっきりしない、カタルシスを感じない最終回だったことも否めません。八代に勝ったという実感のないまま、なんかアニメ的な綺麗な演出で煙に巻かれただけのようで…。悟がリバイバル能力に目覚めた原因が最後まで説明されなかったのも、不完全燃焼の一因。結構そこって重要なポイントじゃないの?

私は元々悟にリバイバルなんて能力はないものだと思っていました。リバイバルという能力自体存在せず、母親が殺されたという事実もなく、ついでに愛梨という少女も架空のもので、総ては悟が思い描いた絵空事にすぎないと。この物語における現実部分は、加代を救って八代に殺されかけた「最後のリバイバル」以降の出来事のみで、それ以外の出来事は15年間眠り続けていた悟が入院中に見ていた壮大な夢だと思っていました。

この見立ては間違いないだろうと人知れずどや顔でいたんですが、そんな予想まったくかすりもしていなかったので恥ずかしい…。でもそれなら、ちゃんとリバイバル能力についての落とし前はつけてくださいよ! なんで悟だけにこんな特別な力が備わっていたのか。結局、そこらの能力系主人公と一緒でご都合的に目覚めた力だったってことですかねー。

総括


毎週終わり際に見せる巧妙なクリフハンガーで、次回への興味を強烈に掻き立ててくるアニメでした。特に最終回前の引きは素晴らしく、どういった幕引きを見せるのか楽しみでしょうがなかったです。アニメ最終回を見る前に実写版の映画を観て多少クールダウンしましたけど、それでも名作アニメに相応しい最高のクライマックスを期待していました。

その高すぎるハードルが仇になったのか、最終回は一定の評価はしつつも、どこかすっきりしないものでした。八代との決着の付け方、リバイバル能力の正体、更には愛梨というヒロインの立ち位置も正直疑問が残るもので。

アニメ「僕だけがいない街」のラストシーンは、Steins;Gateよろしく、初対面として愛梨と奇跡的な再会を果たすドラマティックな締め。でも、彼女って物語において何か重要な役目を担っていましたかね? しれっとヒロイン面していますけど、別に愛梨と悟の間にロマンスがあったわけじゃないですし…。そりゃ警察に追われているときに匿ってくれたのはありがたかったですけど、お互い惹かれあう特別な何かがあったようには思えないのですが。

彼女が悟のことを頭から信用しきっていた理由も、結局よくわかりませんでした。彼女曰く、父親を最後まで信じ切れなかった苦い過去の経験から「人を信じたい」と思うようになったらしいですが、だからといって、親しくもないバイト先の男を根拠なしに信頼したりします? 彼女は性善説に則って、誰の言葉でも疑わずに信じられるってこと? 店長に「何もしないからホテル行こうよ」と誘われたら信じてついて行っちゃうってこと?

大した理由もなく、ただ無条件に人を信じようとする彼女の行動原理はある種の不気味さも感じましたよ。そんな盲目的に人を信じる彼女に信じてもらえても嬉しさとしては微妙ですし、やっぱり「人を信じたい」ではなく「貴方を信じたい」と言ってくれる女性こそが、本当のヒロインと呼べる存在ではないのでしょうか?

私もそんな野暮なところにケチつけたくはないんで、いっそ最初から愛梨と悟は付き合っている恋人同士という設定にしてくれれば良かったんですけどね~。それなら愛梨が悟を全面的に信用していても違和感ないですし、ヒロイン面することにも異議はありません(笑) 悟も愛梨もお互いに対する感情を一切見せないくせに、まるで運命の恋人のように振る舞っているから納得いかないんですよー。

ちなみに、あくまでこれはアニメに対する感想です。原作漫画の方ではアニメで描かれていない愛梨の描写がたくさんあるらしいので、彼女がヒロインたる正当な理由もちゃんと描かれているのだと思います。アニメにおける愛梨の扱いに得心ががいかなかったということですから、悪しからず。

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  1. リバイバルで救え!

    アニメ「僕だけがいない街」を読みました。

    フジにて 木曜深夜にやってました

    おなじみノイタミナ枠です

    本作は元になった漫画があり、僕はそれを読んでまして
    映画化もそれますし…

  1. 愛梨が悟を信じたのには母親と知り合っていて、2人の空気を肌で感じていた、というのが大きいのです。実際、母親以外が被害者だったら悟を信じなかったと愛梨も言っています。盲目的に人を信じるキャラなら店長への鉄拳制裁もありえなかった訳ですし。

    原作だと悟の記憶が戻るきっかけ自体愛梨ですからね。ゴシップ雑誌のカメラマンを成敗する役目は八代ではなく愛梨で、それをきっかけに記憶を取り戻し始め、もう一度愛梨と再会する事で、完全に記憶を取り戻す、という筋書きなんです。悟が異常なまでに早いスピードでリハビリを実行できたのも、外出許可を取って愛梨に会うためですし。まあなんでそこまで愛梨を好むのか?リバイバルとは何なのか?については原作でも大して言及はないので諦めてもらうしかないんですが。

    • 「母親以外が被害者だったら悟を信じなかった」というセリフはアニメでも入れてほしかったですよ~。これがあるとないでは印象が大違い。愛梨が「人を信じる」という思いに縛られて、盲目的に誰でも信じる愚かな女性でなかったのは良かった。

      >ゴシップ雑誌のカメラマンを成敗する役目は八代ではなく愛梨
      あの久美ちゃんとの語らいが隠し撮りされていたシーンですか。最後のリバイバルのあとは愛梨との接点はないはずなのに、どうして愛梨が悟を助けるような真似をしたのかはちょっと気になりますが…。悟と愛梨の関係性って原作とアニメでは相当違っているみたいですね。原作ファンの人は、その辺許容範囲だったのかな?

      >なんでそこまで愛梨を好むのか?リバイバルとは何なのか?については原作でも大して言及はない
      そ、そうですか。特にリバイバルの説明は不可欠のように思うんですが、他の人はそういうのあんまり気にしません…? せめてどういうきっかけで目覚めたのかぐらいは明らかに…!

  2. わたしも突然ヒロインになったアイリには共感できず、
    シュタゲの岡部と栗栖ほど感動的ではありませんでした。

    むしろ、店長みたいにすれ違ってほしかったです。
    そのほうが僕だけがいない街(悟が歩いていた歴史が消えた現在)のような感じで、切なかったのですが残念です。

    映画の八代は残念な悪役な感じなんですね。
    冷静に淡々と、殺人を行う八代が怖かったのですが、見ないほうがよさそうですね(笑)

    • タイムリープモノの定番なのか、終わり方はほぼSteins;Gateと一緒でしたね(笑) Steins;Gateのときも、まゆしぃ派だった私は紅莉栖がメインヒロイン扱いだったことに不満がありましたが、それでも紅莉栖がヒロインの1人であることに文句はなかったです。しかし、僕だけがいない街の(アニメ版の)愛梨はヒロインであることすら疑問だったので…。

      >映画の八代は残念な悪役な感じ
      及川光博さんの配役は良かったのに、なんであんなに小者っぽくなってしまったのか…。オリジナル部分を担当する脚本家が、僕だけがいない街の物語をよく理解できていなかったんでしょう。

ABOUTこの記事をかいた人

なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。