坂道のアポロン第6話「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズ」雑感

新キャラクター松岡星児が千太郎に接近し始めたことで、俄に色めき立った男同士の三角関係。急速に親密さを増してくる星児と千太郎の仲に、薫としては気が気でない。何故なら、それは親友とジャズ仲間の両方を失ってしまいかねないからです。

重要なのはまさにここ。薫は親友が奪われることに対する心配だけでなく、千太郎が“ジャズ”を捨てて星児が薦める“ロック”に趣旨替えしてしまうことを不安に感じているんですよね。

そんな気持ちはお構いなしに、薫と千太郎の聖域である地下スタジオにまで我が物顔でずかずかと足を踏み入れてくる星児。薫は嫉妬にも似た感情を爆発させて口論を始めますが、間に入った千太郎が言葉を遮りハッキリとこう告げる。

「俺のことはそいつが一番ようわかっとる」
「ここは部外者立入り禁止だ。ジャズば馬鹿にする奴はもってのほか」
「これ以上、俺たちの聖域ば汚すな。出ていけ」

ここでビシッと星児に言い放った千太郎の男らしさと来たら!! 爽快な気分に満たされつつ、同時に胸が熱くなるような感動!

このセリフの直後、思わず薫が涙ぐんでしまったのもよくわかりますよ。自分が今一番言って欲しかった言葉を、千太郎は事も無げに口にしてくれたわけですからね。その安堵と嬉しさが涙となって零れてしまったのでしょう。本当にじーんと心が震える素晴らしいシーンでした。

ただ、私が1つど~~しても解せなかった点がありまして、それはこの坂道のアポロン屈指といえる名場面が、何故かアニメでは全面カットされていたこと。

……正気を疑いますね。前回の母親との再会シーンでも肝となる部分を全部省きやがりましたが、今回またこんな名場面を削ってしまうなんて。尺の都合でカットするにしても、明らかに取捨選択間違っているでしょ! こんなのタイタニックで船が沈没するシーンをカットするのと同じじゃないですかっ!!

千太郎が一度星児を拒絶した事実を省いてしまうと、後日星児とロックをやると言い出した千太郎に対して薫が怒りをぶちまけたシーンも意味合いが違ってきてしまう

友達の輪の中に入ろうと必死に作り笑顔を浮かべていたら、逆にその笑顔が気持ち悪いと周りから拒絶されてしまった過去のトラウマも語られなかったので、これでは薫の感情の起伏がただのヒステリックと受け取られかねません。アニメを見ている人が、薫のことを「すぐふて腐れるガキ」みたいな悪印象を持って見てしまったら悲しいことだなぁ…。

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なでしこやまとでは、総ての作品が浅生大和の主観に基づいてレビューされています。私個人の主義主張&趣味嗜好が評価に大きく関与し、客観性を無視した極めて独善的なレビューとなっております。そのことを充分踏まえた上でご覧いただけるよう、よろしくお願い致します。
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  1. はじめまして、毎週感想読ませていただいています。
    今週薫が突然怒りだしたのが腑に落ちなくて、「こんな余裕ない子だったのかな」とか思ってたのですが、地下スタジオのエピソードがあったからこそのあの反応だったんですね。
    アニメから見て、確かに面白いけど何か物足りなさを感じていたのですが、ご感想を拝見するとどうも原作から読んだほうがいいみたいですね。
    定評のあるカウボーイビバップの監督ということで期待していたのですが、どうもあまり原作を活かすのには長けていらっしゃらないようです。
    参考になる感想、ありがとうございます。

  2.  yukiさん
    初めまして~、管理人の浅生です。

    薫としては、「あのとき星児をハッキリ拒絶して、ジャズを選ぶと言ってくれたのに!」という思いがあったわけですね。千太郎がロックを始めたことへの怒りというより、千太郎の心変わりに対する怒り。その辺がアニメでは伝わってこなかったのが残念です。

    >原作を活かすのには長けていらっしゃらないよう
    シーンの取捨選択に対する疑問はあるものの、全9巻の物語を1クールにムリヤリ収めようとすれば、誰がやっても綻びが出てしまうものだと思うので、必ずしも監督が無能だという話ではないんですけどね…。端られた部分は是非原作を読んで補完してもらえれば。